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“楽天離れ”に歯止めがかからず…「中華系ECサイト」と比べて致命的に弱い部分が露呈

「呼び込みパンダ作戦」が崩壊するのも時間の問題か…

また、楽天市場には「ポイント目当てでの買い物」や「お買い物マラソン」のように「次は何を買おうかな」と、ユーザーにとって買う商品が決まっていないが、ふらっとその場所を訪れて衝動買いする楽しみが備わっている。こうした「衝動買い体験」を2つのサイトが奪っていくのである。なぜか。 それは、SHIENやTemuで取り扱われている「客寄せパンダ」にあたる商品の多くが楽天市場より安いからだ。 「客寄せパンダ」にあたる商品とは、スマホスタンドや携帯扇風機など、価格、機能、デザインだけで消費者に選ばれるモノが多い。 一口で言えば、ブランド性など皆無の「安ければなんでもあり」な商品だ。となると、こうした商品は激しい価格競争の中で選ばれるため、中国のECサイトが選択される。 結果、この楽天市場の「呼び込みパンダ作戦」が崩壊し、他の商品をカートに入れてもらい、客単価をアップさせる同社の戦略は総崩れしてしまうのだ。

「ワクワク感」「エンタメ感」すらも奪われる

もう一つ楽天市場のシェアが奪われる要素がある。それは、同サイトが持つ「ワクワク感」や「エンタメ感」だ。具体例を示そう。もし、ある人が楽天市場でプロテインを買ったとしよう。 その際に、カートのページで「こちらの商品もいかがですか?」とプロテインシェーカーをおすすめされたとする。だが、多くの人はすでにプロテインを日常的に飲んでいるため、シェーカーはすでに持っていることが少なくないのではないだろうか。 となると、実際はプロテインを買った人には、“良質なタンパク源”としておなじみの鶏ささみ肉とブロッコリーを「おすすめ」したほうが購入する可能性が高いと言えるだろう。 もし、鶏ささみ肉とブロッコリーが提案されれば、その的確さにワクワクし、思わずよりサイト内を回遊してしまうのではないだろうか。まるでAIによって次々と好みの動画がおすすめされてくるTikTokのように。 だが、楽天市場はこのささみとブロッコリーの提案力が致命的に2つのサイトより弱いのである。プロテインメーカーの場合、鶏ささみ肉とブロッコリーは取り扱っておらず、恣意的に自社商品(シェーカー)を提案するしかないからだ。
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AI開発が後手に回っている楽天ののっぴきならない事情
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EC・D2Cコンサルタント、Amazon研究家、株式会社GROOVE CEO。慶應義塾大学環境情報学部卒業後、新卒採用第1期生としてアマゾンジャパン合同会社に入社、出品サービス事業部にて2年間のトップセールス、同社大阪支社の立ち上げを経験。マーケティングマネージャーとしてAmazonスポンサープロダクト広告の立ち上げを経験。株式会社GROOVEおよび Amazon D2Cメーカーの株式会社AINEXTを創業。立ち上げ6年で2社合計年商50億円を達成。Youtubeチャンネル「たなけんのEC大学」を運営。紀州漆器(山家漆器店)など地方の伝統工芸の再生や、老舗刃物メーカー(貝印)のEC進出支援にも積極的に取り組む。幼少期からの鉄道好きの延長で月10日以上は日本全国を旅している

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