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“楽天離れ”に歯止めがかからず…「中華系ECサイト」と比べて致命的に弱い部分が露呈

AI開発が後手に回っている楽天ののっぴきならない事情

一方、SHIENとTemuは違う。 他社製品もおすすめされるUIと、膨大なビッグデータと優れたAIにより、ささみとブロッコリーをその場で「おすすめ」として提案できるのである。いわば「EC版TikTok」、それがSIENとTemuなのだ。 とはいえ、現状日本においては前述したように、YouTubeやSNSでの投稿を見て両サイトで購入する若年層が多く、そのアルゴリズムによって気持ちよく買い物をするユーザーはまだまだ少数と言ってよいだろう。 話を戻すが、優れたAIを開発することは楽天市場にとっても決して技術的に不可能ではない。だが、すでにモバイル市場に投資してしまい、ヒトもカネも楽天市場に投資できない同社はなかなかその改革が難しいのが現状と言えるだろう。 以上の理由で、楽天市場は今後新興中国系ECサイトにシェアが奪われる可能性があると言えるのだ。

もちろんSHIEN、Temuにも課題はあるが…

だが、両サイトに弱点がないわけではない。まず指摘できるのが、低単価ゆえの「送料負け問題」だ。現在、低単価商品が売れているSHIENとTemuの場合、軽量で小さいメール便で送れる商品(送料が200円弱)でなければ、送料が高くついてしまい、商売が成り立たないのだ。 これは、大量生産できる薄利多売の商品であるため、中国メーカーが圧倒的に強く、日本国内のメーカーにとっては大きな参入障壁となるだろう。 また、楽天市場のシェアを奪った「呼び込みパンダ商品」の先に売りたい高価格商品を販売できるのか、という課題もある。 「客寄せパンダ商品」は利益度外視の商品であることも多く、今後は客単価アップを図るための何らかの施策が必要になるだろう。特に日本のメーカーの場合、消費者人口的にも薄利多売できる会社は一部にとどまるだろう。 また、SHIENは、工場で働く従業員たちが一日17時間勤務を強いられ、平均賃金は日給約3300円であることなど過酷な労働環境が報じられていることや、商品デザインの盗用問題などが批判されている。 言い換えれば、こうした課題を乗り越え、世界的に支持されたとき、SHIENとTemuは一気に楽天市場のセールを滅ぼすほどの脅威を持つことになるだろう。 <TEXT/田中謙伍>
EC・D2Cコンサルタント、Amazon研究家、株式会社GROOVE CEO。慶應義塾大学環境情報学部卒業後、新卒採用第1期生としてアマゾンジャパン合同会社に入社、出品サービス事業部にて2年間のトップセールス、同社大阪支社の立ち上げを経験。マーケティングマネージャーとしてAmazonスポンサープロダクト広告の立ち上げを経験。株式会社GROOVEおよび Amazon D2Cメーカーの株式会社AINEXTを創業。立ち上げ6年で2社合計年商50億円を達成。Youtubeチャンネル「たなけんのEC大学」を運営。紀州漆器(山家漆器店)など地方の伝統工芸の再生や、老舗刃物メーカー(貝印)のEC進出支援にも積極的に取り組む。幼少期からの鉄道好きの延長で月10日以上は日本全国を旅している
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