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「家賃は3万5000円、洗濯機もありません」デビュー作“30万部超え”なのに年収200万円台、元芸人作家が告白

バターは高級品、買ったことがない

――では、炒めものはどうしていますか? 藤崎:肉類は酒、みりん、しょう油で適当に下味をつけてから焼いて、野菜を入れると肉の脂が回ります。汁物を炒めないのは、母直伝です。高3の頃には絶対お笑い芸人になると決めていたから、自立できるよう実家で自炊の練習をしていたんです。 当時、母に教えてもらいました。「カレーの箱の裏に、具材を炒めるって書いてあるじゃない。この工程、いらないわよ」って。炒めずに作ってみたら、少なくとも僕の舌では違いがわかりませんでした。 ――では、バターも使わないんですね。 藤崎:バターなんて高級品、買ったことがありません。引っ越ししたときのダンボールをカットした食材置き場用に使うとか、洗濯機すら持っていない生活ですから。

一人暮らし歴が長いと「これでいいや」が増える

――洗濯機がない!? 藤崎:室内に洗濯機置き場はあるんですけど、傘や洗面器、絨毯や雪かきスコップ置き場になっています。絨毯は杉並区阿佐ヶ谷の前に住んでいた、風呂なしアパートが取り壊されることになっていただいたんですよ。以来、一度も使うことなくゴミとして一緒に引っ越しています。貧乏性ゆえでしょうね。

物置きと化した洗濯機置き場(本人撮影)

洗濯機を買う金がないわけじゃないんです。買うとなると、寸法を測って粗大ゴミを捨てて、という作業が面倒で。だったら洗濯は手洗いでいいじゃないかと。 浴槽に洗剤水溶液を張って、洗濯物を入れて、しばらく漬け置きする。そして素足で踏んでいます。冬は足元が寒いから、洗面所を使って。洗濯機がない時代の生活をしています。 高校卒業後に一人暮らしを始めたんですけど、歴が長いと「これでいいや」が増えちゃうんですよね。料理は大好物を食べているから「これでいい」し、洗濯も同じ。本気で洗濯したくなったら、1階のコインランドリーに行けばいいし。洗濯機、たぶんずっと買わない気がします。  一人暮らしの「あるある」まで語ってくれた、藤崎氏。昨年上梓した『逆転美人』(双葉文庫)は紙書籍ならではのトリックにはまんまと騙された。『逆転シリーズ』二作目の、『逆転泥棒』(双葉文庫)は、ホロリと涙しつつ騙された。というか藤崎作品には毎度騙されるわけだが、小説家という高収入のイメージが“逆転”した質素すぎる生活にも見事に騙されたといったところか。 <取材・文/内埜さくら 撮影/山川修一>
うちの・さくら。フリーインタビュアー、ライター。2004年からフリーライターとして活動開始。これまでのインタビュー人数は3800人以上(対象年齢は12歳から80歳)。俳優、ミュージシャン、芸人など第一線で活躍する著名人やビジネス、医療、経済や一般人まで幅広く取材・執筆。趣味はドラマと映画鑑賞、読書
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逆転泥棒』(双葉文庫)

驚きの「逆転トリック」がまたも炸裂

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