“働かない高給取り”の上司とワンマン経営者。若手看護師を潰す「地獄のクリニック」
人事労務に関わり、30年を超えるキャリアの人事コンサルタント・川口雅裕さんに取材を試みた。以下は、川口さんの回答を筆者が構成したもの。
雇われる側からすると、女性の経営者(事務長兼看護部長)が息子とともに会社を私物化していると見えるのかもしれませんね。それはわかりますが、この経営者の感覚は、自分が創業者で大株主であり、オーナーである以上、会社はある意味で「私物」なのでしょう。
たとえば、親子で乗り回す車で言えば自分のものを自分たちで使いこなしているだけ、と思っているのではないでしょうか。「私物化」と批判を受けたら、「何がいけないの?」ぐらいに言うのではないか、と思います。
私の感覚で言えば経営者とは「役割」なのですが、このタイプのオーナーは「身分」と思っている可能性があります。事例を読む限りでは、経営者は「私とあなたたちは身分が違うの?それの何がいけないの?」と心の中では思っているのかもしれませんね。
社員たちのことも、ある時には私物として捉えているのではないでしょうか。仮に退職をしたら、「また、求人サイトに募集広告を載せて雇えばいい」といったように。あるいは、自分たちオーナー一族に不都合な意見を言う社員がいるならば「そこまで言うならば、辞めたら?」と思っているかもしれない、と私は見ます。
私物としての会社なのですから、自分たちの都合のいいように機能を果たすことができる人を高く評価するでしょう。副部長が仮に部下の看護師にモラハラをしていたり、辞めるように仕向けていたとしても、自分たちオーナーが大きな損害を被らなければ、真剣には受け止めないでしょう。「辞めても、また代わりに人を雇えるならば問題はない。自分たちの会社だから」などと思っているのではないでしょうか。
副部長のもと、看護師が1つのチームとして機能し、収益も上がっているならば、おおむね問題なしと考えていると思います。本来は、大きな問題ではあるのですが。
あるいは、同じ看護師として副部長の経験や技能にリスペクトするものがあるのかもしれません。
自分では太刀打ちできない、とも考えているのかもしれませんね。少なくとも「辞められては困る」とは思っているでしょう。だからこそ、相場からして高い賃金を払っているのだと思います。
会社は「私物」であり、経営者は「身分」
自分たちの求める機能を果たすことができる人を高く評価
ジャーナリスト。1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006年より、フリー。主に企業などの人事や労務、労働問題を中心に取材、執筆。著書に『悶える職場』(光文社)、『封印された震災死』(世界文化社)、『震災死』『あの日、負け組社員になった…』(ダイヤモンド社)など多数
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