仕事

“働かない高給取り”の上司とワンマン経営者。若手看護師を潰す「地獄のクリニック」

現場を掌握しようとするのも、自分の所有物を大切にしようとしているから

 会社を私有物と考えているからこそ、息子をいきなり総務部長にもできるのです。こういうのは、一部の政治家や医師にも見られます。社会問題になるケースがありますが、本人たちには問題意識はさほどないのではないでしょうか。経営者が社内の現場のあらゆることに介入し、掌握しようとするのも自分の所有物を大切にしようとしているからなのです。  経営学者が学生らに教える「所有と経営の分離」(会社の所有者と経営者を分離する仕組み)で言えば会社という私物を所有し、経営者といった身分を持っていると考えているのでしょう。「所有と経営の分離」は大企業や上場企業には言えることかもしれませんが、今回の事例では該当しないように感じます。分離しようとしても、できないようになっているのです。

経営が成り立たなくなる時代がすぐに来る

シニア看護師

写真はイメージです

 コンサルタントとして長年にわたり、このような経営者に助言や指導をしてきましたが、多くはこちらの言うことを素直に受け入れることはまずしません。印象的なもので言えば、ある経営者は「社員たちの誕生日にはバックをプレゼントしてあげたのに、有給休暇をとりたいなんて言うのよ、許せない!」と怒っていました。「自分の所要物である会社で働き、プレゼントまでしているのに、あなたの都合で休むの?」といった思いがあるのかもしれませんね。  こういう会社や今回の事例の経営者の会社は、大きくは発展しないでしょう。経営者たちはそれで満足しているのではないか、と思います。所有物といった意識が強いので、リスクを冒して拡大していくよりは現状維持の路線で、自分たちのモノを大切にしたいのではないでしょうか。  29歳の女性看護師は現代のナイチンゲールのようなマインドを持っているのかもしれませんが、私の経験をもとに言えば、ここではキャリア形成がいきづまる気がします。経営者と副部長のコンビでは、成長は難しいと思えるのです。看護師は人の命に関わる、すばらしい職業であり、今後、高齢社会でキーとなる職業でもあります。  退職を勧めるわけではありませんが、これを機に長い視点で見てキャリアが確実につくれる病院やクリニックを見つけることを考えてもいいのかもしれませんね。この経営者には、働く側のことをある程度は考えないと、経営が成り立たなくなる時代がすぐに来ることはお伝えしたい。なかなか変わらないでしょうが。 川口雅裕氏 1988年、リクルートコスモス(現 コスモスイニシア)に入社。人事部門で、組織人事、制度設計、労務管理、新卒や中途の採用、社員教育研修に携わる。2001年からは経営企画室で広報やIRを担当。03年に退職後、人事コンサルタントとして独立し、多数の企業の組織人事コンサルティングを行う。現在は、NPO法人「老いの工学研究所」理事長。著書に『なが生きしたけりゃ 居場所が9割』(みらいパブリッシング)、『年寄りは集まって住め~幸福長寿の新・方程式』(幻冬舎)など。
―[モンスター上司]―
ジャーナリスト。1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006年より、フリー。主に企業などの人事や労務、労働問題を中心に取材、執筆。著書に『悶える職場』(光文社)、『封印された震災死』(世界文化社)、『震災死』『あの日、負け組社員になった…』(ダイヤモンド社)など多数
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