カフェ&ゲストハウスをオープン

チェックアウトしてうさ子さんに見送られるときに旅人が撮ってくれた写真
そしてうさ子さんが次に同じ高崎市内にオープンしたのが現在の「カフェ&ゲストハウス灯り屋」である。古民家を改装し、カフェにドミトリー形式のゲストハウスを併設した。生まれたときからずっと住み続けている人が多く、住民はお互いのことを子供の頃から知っているため、「ちゃん」付けで呼び合うようなエリアだった。そのため、あまり自分勝手な営業はしたくなかったので、オープン前に灯り屋のことを書いた新聞を近所に配った。そのおかげでそんな人々にも温かく迎え入れられた。

ゲストハウスの共有スペース
こんなこともあった。ある日、近所のおじさんが大きなリュックを背負った白人男性を軽トラに乗せて連れてきた。
「このあたりをうろちょろしてたからさ。言葉が通じなくてなに言ってるかわかんなかったけど、たぶんここに来たいんだろうなあと思って連れてきたよ」

ゲストハウスの男女混合ドミトリー
そしてその白人男性から話を聞いてみると、実際に灯り屋のゲストハウスに宿泊予約をしていた旅行者だった。
外国人客からは
高崎の魅力に改めて気付かされることも多い。
「高崎を散歩して撮った写真を私に見せてくれるんですけど、こんなにきれいな景色が高崎のどこにあったんだろうと驚かされますね」

古民家を改装してオープン
外国人客だけでなく日本人客も着実に増えていった。今度こそうまくいきそうに思えた。が、そこで見舞われたのがコロナ禍である。他の多くの飲食店や宿泊施設と同様、灯り屋も
窮地に追い込まれた。しかし、うさ子さんはそれほど悲観はしていなかったという。
「もしこれで灯り屋がダメになっても、それはそれでいいかなと思っていました。
自営業だったら他のことに変えてもいいんです。組織で働くのと違って、自分の責任において自分の好きなことをできる自営業という働き方をすごく気に入ってますから」
うさ子さんのそんな前向きな心持ちのためか、コロナ禍も無事に乗り切ることができた。そこで彼女は灯り屋との同時進行でまた新しいことを始めたくなった。静かな店内で読書をできるブックカフェである。
「静かな場所でお酒を飲みながら本を読んでいるとその作者と話しているような気分になれて、そんな時間が大好きだったんです。でも、高崎にはまだそんな風に過ごせるお店がなかったので」
しかし、ブックカフェをやるためにはおしゃべりを楽しむ今の灯り屋のままではダメ。それに、スタッフにブックカフェを任せるとしたら、静かに本を読む環境を作るためにたくさんルールを作らなくてはならない。が、それは灯り屋らしくない……。そういった悩みからなかなか実行に移せずにいた。そんなときに灯り屋のお客さんからこんな相談を受けた。
「実は自分でブックカフェをやってみたくて……」
この人だ!と思った。スタッフを雇ってたくさんルールを設けてブックカフェをやるのではなく、すべて彼に任せてしまえばいいのである。それはうさ子さんの悩みをすべて解決してくれるような奇跡的な出会いだった。
現在、灯り屋は火・水・木の3日間を定休日にし、その間はその人に灯り屋を貸して「本読み喫茶 うら庭」として営業している。

スイーツも提供する
組織で働くことに馴染めず、ピースボートで世界一周の旅に出た。そしてその末に自分の好きを形にしてオープンさせたうさ子さんの店は、今日も高崎の片隅でその灯りを灯し続けている。
<取材・文/小林ていじ>
バイオレンスものや歴史ものの小説を書いてます。詳しくはTwitterのアカウント
@kobayashiteijiで。趣味でYouTuberもやってます。YouTubeチャンネル「
ていじの世界散歩」。100均グッズ研究家。