仕事

「職場の仕切りたがり屋」のモラハラに苦悩する29歳清掃員…精神科医が教える“身の守り方”

2.尊大型ASDの強いこだわり

「尊大型ASDには、たとえば仕事をするうえで不確定要素やあいまいなものを1つでも減らしたい、と強く思う傾向があります。それが、結果として周囲への押し付けにつながりやすいのです。 事例の女性社員が仮に尊大型ASDだとすると、子どもの頃から良好な人間関係を構築することができなかったために、自分が認められる機会や場が少ないことが考えられます。現在の職場で評価され、認められ、居場所を確保したと受け止めているならば、仕事の仕方に強いこだわりを持つのは本人にとっては、重要なことなのかもしれません。パート社員であっても、それは変わらないのではないでしょうか」

3.居場所をつくり、それを守ることに懸命になっている?

「尊大型ASDなどを併発していない自己愛性パーソナリティ障害の人は利害関係に敏感で、自分にとってプラスになる人、たとえば上司にはきちんとした配慮をして高い評価を受ける傾向があるのです。特に社員間の競争が激しい職場などでは、上司には上手く立振る舞うことがあります。 ですから、周囲の社員はこのタイプの自己愛性パーソナリティ障害の社員への対応が難しくなるケースがあります。周囲はおそらく好意的に受け入れることもしないのでしょうが、対抗もしずらいのです。 事例の女性社員は、ほかを併発していない自己愛性人格パーソナリティ障害の社員のように言わば、勝ち筋を心得たうえで振舞っているとは思えない面があります。たとえば、チーフを飛び越えて、部長に報告する行為は組織人としては上手いとは思えないのです。器用に立ちまわっているようにも感じないのです。 強引に押し付けるのは周囲を支配しようとしているというよりは、居場所をつくり、それを守ることに懸命になっていると見ることもできうると思います」
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4.同僚らとチームで対応
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ジャーナリスト。1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006年より、フリー。主に企業などの人事や労務、労働問題を中心に取材、執筆。著書に『悶える職場』(光文社)、『封印された震災死』(世界文化社)、『震災死』『あの日、負け組社員になった…』(ダイヤモンド社)など多数
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