お金

5060億円市場を3社が競う牛丼チェーン。“松屋外交”で各国大使も絶賛する松屋の強さの秘密

経営効率の面では吉野家に若干劣る

 売上増加により固定費の比率が低下したことにより、販管費についても前年の65.0%から61.7%へと改善した。それらの結果で、営業利益はコロナ収束間もない頃ではあるが、前年比262.5%増の53億2200万円、経常利益は前年比52.7%増の59億7800万円となり、大幅に改善し、今後も期待できそうである。  財務基盤は総資産796億9700万円に対して自己資本414億300万円で自己資本比率52%と安定している。ただし、企業がどれだけ効率的に利益を上げているかを見る指標であるROEは6.84%と理想である10~20%には届いていない。ちなみに競合店である吉野家は9.71%と理想に近い状態であり、経営効率の面では若干劣っているようだ。  営業基盤である出店状況は現在、国内総店舗数1254店で、内訳はコア業態の松屋が1037店、とんかつの「松のや」が185店、その他32店である。松屋と松のやの併設店も人気だ。  ここ最近の物価高騰・円安・人手不足による賃金上昇・エネルギーコストの上昇などで、飲食店にとっては、費用の負担が利益を削り、店を持続させることが困難になっている。30年と長引いたデフレをさまざまな工夫で生き抜いた飲食店は、値下げすることは慣れていても、値上げすることに慣れていないために苦労している。  各店、値上げは段階的に進めているが、競合店とのし烈な競争から、値上げのタイミングには慎重になっており、採算が厳しそうだ。物価上昇に賃金上昇が追いつかず、少し高くなってもいいものが食べたいというお客さんは限られているなか、生き残りに知恵を絞っている。

逆風下でも「世界の味」シリーズが好評

 定食メニューの豊富さは松屋の強みだったが、今はすき家も吉野家も定食メニューを充実させている。同質化されつつあるメニュー内容だが、松屋は世界の料理を「世界の味」シリーズとしてメニュー化し、人気を博している。なかでもジョージアの「シュクメルリ」が90万食の大ヒットとなり、これは“松屋外交”とも呼ばれており、各国の大使館関係者からも好評のようで、メニュー化の要請も多いようだ。  松屋の世界各地の伝統料理にまで視野を広げた商品開発力は、競争上の差別的優位性を有していると評価されている。一方で、外食業界では、海外からの旅行者によるインバウンド需要が回復して、外食需要が高まっている。しかし、食料自給率が40%程度と海外からの輸入に依存している日本は、円安で輸入食材の高騰やエネルギーコストの高騰などにより、経営環境が相変わらず厳しい状況である。  その中であらゆる供給で需要を喚起するをテーマに松屋は新商品の導入が活発だ。代表的な新メニューは「ホワイトソースハンバーグ定食」、「牛肉チャプチェ定食・チャプチェコンボ牛めし」「デミグラスソースハンバーグ定食」「ねぎたっぷりスパイスカレー」「ネギ塩牛焼 肉丼」「炙り十勝豚丼」などである。
次のページ
吉野家ブランドに固執しない牛丼好きを吸引
1
2
3
飲食店支援専門の中小企業診断士・行政書士。自らも調理師免許を有し、過去には飲食店を経営。現在は中村コンサルタント事務所代表として後継者問題など、事業承継対策にも力を入れている。X(旧ツイッター):@kaisyasindan
記事一覧へ
SPA!編集部が「人生後半を賢く楽しく生きる」をテーマに厳選した記事をメルマガ会員限定で毎週金曜日にメールでお届けします。仕事・お金・性・人間関係…人生を豊かにする秘訣が見つかります。無料・10秒で完了です。
無料でメルマガ登録する⇒⇒
※登録後、メール認証が必要です。受信した認証メールをクリックして、登録を完了させてください。
※認証メールが届かない場合、迷惑メールに入っているか、メールアドレスが間違っている可能性があります。再度ご登録ください。
【関連キーワードから記事を探す】