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大量閉店「いきなり!ステーキ」の現在地。「肉マイレージカード」の改悪にファンから批判も…収益は改善したワケ

拡大を続けた結果、「共食い」で業績が悪化

 規模拡大を続ける一方、いきなり!ステーキの収益性は悪化していました。18年度で53.1億円だった同事業のセグメント利益は19年12月期には19.2億円まで縮小し、20年12月期にはコロナ禍も影響して赤字に転落します。業績が急に悪化したのは、過剰な出店によって店舗同士の「共食い」が発生したためです。  400~500店舗といえば現在の「かつや」や「なか卯」と同じ程度の規模。そもそもステーキを食べる習慣は定着しておらず、話題性に支えられていたいきなり!ステーキは、急に業績が悪化することとなりました。19年度は既存店の客数が前年より3割も減りました。FCより直営店が多いことも、業績悪化に拍車をかけました。  前述の通り19年度末時点で店舗数は490。再建のため、当時339店舗を展開していたペッパーランチ事業をPEファンドに売却せざるを得ませんでした。ちなみに現在ではホットパレットが運営しており、国内外で500店舗を運営するなどペッパーランチは今でも健在です。

不採算店を閉鎖し、着実な成長を目指す

 近年はコロナ禍の影響もあって事業は悪化。ペッパーフードサービスは不採算店の閉鎖を進めました。2019年12月期から23年12月期の業績は次の通りです(数値はいきなり!ステーキ事業単体)。 売上高:571億円→270億円→175億円→136億円→138億円 セグメント利益:19.2億円→▲17.3億円→3.7億円→2.4億円→8.7億円 国内店舗数:490店→287店→226店→206店→186店  再建過程で「肉マイレージカード」のサービスを改悪したほか、オーダーカットを撤廃するなど、固定客を掴んでいた施策を取りやめ、メニューも以前より大幅に絞り込みました。こうした施策はファンからの批判が多かったものの、不採算店の閉鎖で見事に収益は改善しました。今年9月末時点で177店舗を展開し、規模縮小も落ち着きつつあります。  急な出店で失敗したいきなり!ステーキですが、都市部において同種の業態は少なく、固定ファンも多く存在します。以前ほどの規模にまで再拡大することはないでしょうが、今後は細々と事業を続けることでしょう。 <TEXT/山口伸>
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 Twitter:@shin_yamaguchi_
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