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薬、iPhone、財布…“チェックリストの刺青”を腕に刻んだ女性の半生。薬を飲み忘れ「やらかした」事件を経て

「楽しく生きていきたい」からこそ

 精神障害の当事者として、百合さんにはこんな思いがある。 「恥ずかしかったり、惨めだなと思う気持ちは理解できなくないのですが、社会のセーフティネットってとてもありがたくて。私もいろいろ将来のことを考える場面があるのですが、あまり壮大な夢を描かず、でもその場その場で自分の病気を乗りこなしながら、できれば楽しく生きていきたいと思っているんです。そのとき、やはり社会保障があるから安心して生きていける。世間の目とか圧力に臆することなく、自らの病気と長く付き合うために時間を使えばいいのではないかと考えています」  血こそ繋がっているが心の繋がりを感じられない父親との数奇な共通点。自らの性質に悩み、慟哭したこともあっただろう。ままならない状況のなかで、百合さんは乱高下する自らの好不調に沿うようにライフスタイルを変え、摩擦の少ない人生を選んだ。ラッパーとして、言葉を紡ぎ続けること。誰からも理解されない、人の目が気になって言えない人だけが持つ言葉の底力を信じているからこそ、彼女だけのリリックが光り輝く。 <取材・文/黒島暁生>
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki
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