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名奉行「遠山の金さん」の彫り物は、桜吹雪ではなく“女の生首”だった!?『禁断の江戸史』より

「遠山の金さん」のストーリーは間違いだらけ!?

墓 先生に「遠山の金さん」のストーリーについて聞くと、ほとんどがウソだらけなのだとか。 「町奉行が直接容疑者に尋問するのは禁じられているし、裁判中、町奉行は動かずに行儀を正していなければいけません。ましてや立ち上がって彫り物を見せるなどもってのほか。そもそも、縁側からお白洲へ降りる階段など存在しません。  しかもドラマの金さんは、彫り物を見せて相手を観念させたあと『市中引き回しのうえ獄門』などと、判決を犯人に申し渡していますが、これも間違いです。  死罪などの重刑は、あらかじめ将軍や幕府の老中の許可が必要。しかも申し渡しは奉行所ではなく、牢屋敷においておこなわれるものなのです」

金さんが遊び人に扮して市井を徘徊していた……のはウソだった!

 さらに、実際の町奉行の遠山金四郎が遊び人だったというのもウソであると、河合先生は指摘する。 「悪い仲間と付きあい、博打を打ったり、森田座(芝居小屋)で囃子(はやし)方の笛を吹いていたという逸話もありますが、あくまでそれは若い時分の話です。  金四郎が初めて北町奉行に就任したのは48歳のときで、当時としては老年といってもよい年齢。  それに町奉行は、現在でいえば東京都知事、地方裁判所の長官、警視総監、閣僚を兼ねる地位で、在職中の死亡率が高い激務です。ちょいワルオヤジのように、悪所に出入りして遊んでいる暇などないですよ」
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金さんの入れ墨は、桜吹雪ではなかった!
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歴史作家、多摩大学客員教授、早稲田大学非常勤講師。 1965 年、東京都生まれ。青山学院大学文学部史学科卒業。早稲田大学大学院博士課程単位取得満期退学。歴史書籍の執筆、監修のほか、講演やテレビ出演も精力的にこなす。『教科書に載せたい日本史、載らない日本史』『日本史の裏側』『殿様は「明治」をどう生きたのか』シリーズ(小社刊)、『歴史の真相が見えてくる 旅する日本史』(青春新書)、『絵と写真でわかる へぇ~ ! びっくり! 日本史探検』(祥伝社黄金文庫)など著書多数。初の小説『窮鼠の一矢』(新泉社)を2017 年に上梓。

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