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名奉行「遠山の金さん」の彫り物は、桜吹雪ではなく“女の生首”だった!?『禁断の江戸史』より

金さんは、殺人などの犯罪行為を裁いていなかった!?

武家屋敷 以後、名奉行として歌舞伎や芝居で好んで演じられ、やがて映画やテレビドラマの題材にもなっていった北町奉行・遠山金四郎だが、実際に名奉行だったのだろうか? 「お裁きは巧みだったようです。将軍・家慶(いえよし)は、彼の裁判を見聞きし、その見事な訴訟の扱いぶりに感歎し、金四郎のことを褒めたたえています。ただ、もともと金四郎は家慶の側に仕えていたという経緯があり、お気に入りだったこともその評価と関係しているのかもしれませんね」  ちなみに、金四郎が町奉行在職中に殺人などの犯罪行為について、彼自身が主導して名裁きを演じたという記録は残っていない。

なぜ金四郎は庶民の味方に?

 それでは、なぜ金四郎は名奉行、庶民の味方となったのだろうか? 「それは、天保の改革と深い関係があります。金四郎が奉行になってまもなく、幕府で権力を握った老中・水野忠邦が天保の改革を開始。  この改革は、庶民にとって憎むべきものでした。庶民に厳しい倹約令や贅沢(ぜいたく)禁止令を出し、江戸の市中にスパイを放って奢侈(しゃし)品を身につけているものを片っ端からしょっ引き、取り締まったからです。  流行作家や歌舞伎役者を弾圧するなど、庶民の英雄や娯楽も奪っていったのです。そんな水野の片棒を担いで、実際に江戸の町で厳しい風俗の取り締まりをおこなったのが、じつは遠山金四郎だったのです」
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金さんが現代でも人気ヒーローであり続けるワケ
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歴史作家、多摩大学客員教授、早稲田大学非常勤講師。 1965 年、東京都生まれ。青山学院大学文学部史学科卒業。早稲田大学大学院博士課程単位取得満期退学。歴史書籍の執筆、監修のほか、講演やテレビ出演も精力的にこなす。『教科書に載せたい日本史、載らない日本史』『日本史の裏側』『殿様は「明治」をどう生きたのか』シリーズ(小社刊)、『歴史の真相が見えてくる 旅する日本史』(青春新書)、『絵と写真でわかる へぇ~ ! びっくり! 日本史探検』(祥伝社黄金文庫)など著書多数。初の小説『窮鼠の一矢』(新泉社)を2017 年に上梓。

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