更新日:2025年01月19日 19:58
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八天堂が「くりーむパン」を看板商品に選んだワケ。“倒産危機”から“売上10倍”までの道のり

日本人の嗜好に合わせた「くちどけ×クリームパン」を開発

くちどけ×クリームパン三代目の社長は、未来の「八天堂の看板商品」について悩み続けた。 メロンパンやクリームパン、ジャムパン、あんぱん、クロワッサン、食パン──。パン屋に並ぶ人気商品、いわゆる“スタンダード”なパンに対して、何か“スタンダード”な要素を加えれば、新しい“イノベーション”が生まれるはずだと考えた。 またこの開発をきっかけに、東京進出を決めていた同社。一流ベーカリーが多く、おいしいパンも数え切れないほど多い東京に対し、広島からの輸送が前提となるため「冷めても美味しいパン」であることが条件となった。 さらに様々な試作を行う中たどり着いたのが「くちどけ」というキーワード。「くちどけ」は日本人の食の嗜好の一つ。当時“くちどけの良いパン”と呼ばれるものは存在しなかったが、クリームパンであれば、それが叶えられるかもしれないと考えた。 「『くちどけ』を実現するためには、生クリームを使用することが必要でした。ただその場合は冷蔵保管が必要であり、なおかつ焼き上げる前にクリームを包むと、焼成時に溶けだしてしまう。 そこで、焼き上げた後にクリームを入れることができる“くちどけの良い”配合のパン生地の開発、焼き上げたパンにクリームを入れる方法をかなり模索しました」

和洋菓子屋時代の人気商品がヒントに

試行錯誤する中で、ヒントになったのは先代の和洋菓子屋で人気だったある商品だという。 「和洋菓子屋の時代に人気だったショートケーキがパン生地のヒントになりました。パンは強力粉でつくりますが、薄力粉を配合することで、冷やしても硬くならないくちどけの良い生地ができました。 また焼いたパンにクリームを注入する工程では、シュークリームで使っていた“シューポンプ”を活用。冷蔵庫で保管することによって、翌日にはパン生地に水分が移行し、さらにくちどけの良い理想の食感になりました」 和菓子、和洋菓子屋、パン屋の経験があるからこそ作れる、これまでの技術を活かした八天堂ならではのくりーむパンが誕生した。
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東京出店後10倍の売上を達成
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広島生まれ、東京在住のライター。早稲田大学文化構想学部卒。趣味で不定期で活動するぜんざい屋を営んでいる。関心領域はビジネスと食、特に甘いものには目がない。X(旧Twitter):@fujikawaHaruka

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