エンタメ

『べらぼう』歴代最低視聴率でも「面白い大河になる」予感。綾瀬はるかの“スマホ”は序の口、ハズレなし脚本家の狙いとは

江戸時代にスマホの地図アプリが…

写真はイメージです

 そう考えると、ナレーターの九郎助稲荷(綾瀬はるか)を擬人化し、花魁姿でスマホの地図アプリを使わせた演出も理解できる。森下氏は蔦重の時代と現代の垣根を低くしようとしているようだ。第1回の前半でスマホを登場させたのは早いうちにドラマのスタンスを示そうとしたのだろう。  ムチャクチャな時代劇をやっているわけではない。過去にもNHKは同様のことをやっている。伝説の大ヒット時代劇『天下御免』(1971年)である。描かれている時代も全く一緒だ。  今回は安田謙(51)演じている平賀源内には山口崇(88)が扮した。主人公だった。渡辺謙(65)が扮している老中・田沼意次は故・仲谷昇さんが演じた。 『天下御免』はゴミ問題や公害問題、受験戦争などを取り上げた。源内らが銀座の歩行者天国をぶらつく場面まであった。この作品を書いた故・早坂暁さんは、「現代の問題を探っていくと、(答えは)江戸時代に全部ある」と語っていた。すべて人間が起こす問題なのだから、そうなのかも知れない。『べらぼう』も負けてはいない。今後はアニメーションの挿入が予定されている。  男性の視聴率が低かったのは名将や名将軍が登場しないせいでもあるだろう。歴史マニアの女性「歴女」が増えているものの、それ以上に男性には歴史マニアが多い。戦国武将が主人公の大河は男性の視聴率が高くなる。  今回は合戦も一切出てこない。18世紀後期は元禄時代と幕末の間で、世の中は落ち着いていた。この時代が大河ドラマになるのは初めて。これまでの大河のスタッフは平穏なこの時代で物語をつくるのは難しいと考えたのではないか。

ハズレ作品が1本もない

 それでも面白い大河になると読む。理由はまず脚本に期待が出来るから。ドラマづくりのセオリーは「1に脚本、2に俳優、3に演出」である。森下氏は過去にTBS『JIN-仁-』(2009年) 、NHK『ごちそうさん』(2013年) 、同『大奥』(2023年)などを書いてきたが、ハズレ作品が1本もない。  よしながふみ氏(53)の漫画を原作にした『大奥』は放送文化基金賞の優秀賞などに輝いた。男女逆転の世界を舞台とする難しい作品だったものの、森下氏は難なく書き上げた。今回もデリケートな問題が絡む吉原が舞台になるので、脚本執筆は簡単ではないだろうが、挫折することはないはず。ちなみに制作チームは『大奥』と一緒である。
次のページ
第1回のストーリーをさくっと振り返る
1
2
3
放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員

記事一覧へ
おすすめ記事
【関連キーワードから記事を探す】