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なぜ『ドラゴンボール』のテーマパークが「サウジアラビア」に作られるのか。日本のエンタメ業界が抱える“決定的な弱点”

「ハード」よりも「ソフト」が強いのが日本の特徴

一方、前途洋々なだけではない。先述した「ザ・ライン」の建設は資金不足などに陥っており、難航しているという報道もある。これまでにないメガプロジェクトだけに、その建設にあたって大きな障害が発生することは想像に難くない。また、建設のために先住民への立ち退きを強制するなど、国民にとって負の側面も出てきている。 同じぐらい大きなプロジェクトである「キディヤ・シティ」でも、同じような困難が現れるかもしれない。ドラゴンボールのテーマパーク単体の開発がうまく進んでも、それ以外のプロジェクトの進捗によっては、同パークの規模が縮小されることもありうるかもしれない。 最後に一つ。先ほども述べたように「どうしてこれが日本にできないのか」という声も当然ある。しかし、サウジアラビアが進めているような「ハード」の大規模な開発は、特に日本のエンターテイメント産業分野においてはあまり進んでいない。「ハード」よりも「ソフト」が強いのが日本の特徴かもしれない。 実際、日本では「国際的なテーマパーク」を自国独自の枠組みで作り上げてきたことがほとんどない。現在の日本の二大テーマパークといえる東京ディズニーランドとユニバーサルスタジオジャパンは米国由来のもので、日本ではそこにオリジナルなコンテンツを付け加えてきた。ダッフィーは日本独自のキャラクターだが、その人気は高く、アメリカのディズニーランドに逆輸入されたほどだ。 つまり、「ハード」は輸入、「ソフト」は日本で、というのが日本のテーマパークの一つの姿である。もしかしたら、サウジアラビアのドラゴンボールテーマパークが日本に逆輸入(?)されることもあるかもしれない。 <TEXT/谷頭和希>
ライター・作家。チェーンストアやテーマパークをテーマにした原稿を数多く執筆。一見平板に見える現代の都市空間について、独自の切り口で語る。「東洋経済オンライン」などで執筆中、文芸誌などにも多く寄稿をおこなう。著書に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』(集英社)『ブックオフから考える』(青弓社)
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