ライフ

「謝って済むなら警察はいらない」コンビニで“カスハラ”した作業服の男性が我に返って土下座したワケ

客と店員が“商品の袋詰め”を巡ってトラブルに

作業服 佐藤さんが最も印象に残っているのは、作業服にアームカバーを着けた50代ぐらいの男性客だという。 「事の発端としては、レジを担当していたうちのスタッフのAさんが『袋にはご自身で入れてください』と言ったことです。そのお客様はエコバッグを持参しており、以前は商品を入れてもらえたそうなんです」  そのとき、佐藤さん自身は現場におらず、後から防犯カメラの映像を確認してみると、店員のAさんと男性客の間では、次のようなやりとりがあったという。 「袋にはご自身で入れてください」 「入れてくれないの?」 「店の“ルール”なので」 「前は入れてくれたのにおかしくない?」  レジ袋の有料化(2020年)以前は基本的に店員が袋詰めを行っていたが、それ以後はエコバッグが推奨されるようにもなる中で、店員と客のどちらが商品を袋に詰めるのか、店によってもマチマチな印象がある。  店員のAさんは“ルール”と言い切ったが、店長だった佐藤さんいわく、実際に「“ルール”としては存在していなかった」という。 「お客様は怒って、Aさんのふてぶてしい接客態度について咎めました。たしかに、Aさんの接客態度は気分で左右されることが多く、別のお客様からも小さなクレームがたびたび入っていました。お客様の言い分には一理あるな、と。  ただし、お客様はAさんの見た目を揶揄するような暴言まで吐くなど、どんどんヒートアップしていったんです」  Aさんの対応では埒が明かず、「店長と話がしたい」ということで佐藤さんに電話が掛かってきたのだ。クレームの内容を聞き、佐藤さんは謝罪した。これで事態は収束したかと思いきや……。

深夜に呼び出されて…

 その日の深夜、再び佐藤さんのもとに店から電話が掛かってきたという。 「お客様が店まで来られて、『誠意を見せろ』と金品を要求しており、さらには『一筆書け』と……。金品はもちろん、念書のようなものを渡してしまっては、後でこちらが不利になる可能性もあります。『それはできません』と答えました。  すると、お客様の怒りの矛先がこちらに向き、『いますぐ来い!』と言われました。時刻はすでに0時をまわっていましたが、私はすぐに着替えて向かうことにしたんです」  男性客は、店の近くのビジネスホテルに泊まっていた。 「何しに来たの?」 「謝罪にうかがいました」 「いや、だから何しに来たの?」 「謝罪にうかがいました。申し訳ありませんでした」 「謝って済むなら警察はいらない、一筆書けよ」 「それはできません」 「何しに来たの?」  佐藤さんとの間では、この押し問答が繰り返されたという。そして、男性客がおもむろに上着を脱ぎ捨てると、そこには“刺青”が入っていたのだ。 「顔を寄せてきて、『どうなっても知らないからな』と。脅そうと思ったのでしょうが、私は動じませんでした。お客様は要求が通らないことにイライラしたのか、何度もこちらを煽ってきました。それでも論点を変えず、私は店長として謝罪に来たということを伝え続けました」
次のページ
まさかの結末
1
2
3
明治大学商学部卒業後、金融機関を経て、渋谷系ファッション雑誌『men’s egg』編集部員に。その後はフリーランスで様々な雑誌や書籍・ムック本・Webメディアの現場を踏み、現在は紙・Webを問わない“二刀流”の編集記者として活動中。若者カルチャーから社会問題、芸能人などのエンタメ系まで幅広く取材する。趣味はカメラ。X(旧Twitter):@FujiiAtsutoshi

記事一覧へ
おすすめ記事
【関連キーワードから記事を探す】