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「怖くて目を開けられませんでした」長距離バスで隣になった中年男性のセクハラに苦しんだ女子大生。別の乗客が気づいた結果…

眠っていたら、顔を近づけられており…

 男性は再び話しかけてきた。 「『君みたいな可愛い子は危ないよ。こんなに席が近かったら触ろうと思ったら触れちゃうよ。隣が俺みたいなちゃんとした男でよかったね』と言い出して、さらに痴漢にあったことがあるか聞いてくるんです。渋々『ある』と答えたら、どんな感じだったかしつこく聞かれて……」  いつまでも続く不毛なコミュニケーションに辟易した羽多野さんだったが、前日、大学の友人たちと夜中まで鍋パーティをしていたので、話が止んだところで眠気に襲われた。 「どれぐらい寝ていたのか覚えていませんが、『フー、フー』という鼻息で起きたんですが、同時に例の香水のニオイがさっきよりも強くなっていて……。怖くて目を開けられませんでした。明らかに男性が寝ている私の顔のすぐそばまで顔を近づけているんです。顔を背けるのが精一杯でしたが、それでも近づけてくるので、パニックになっていました」

アナウンスによって助けられる

 泣き出しそうになっていた羽多野さんだったが…… 「不意にアナウンスが流れたんです。『中央に座っている青いシャツの方、隣の席の方に接近するのはおやめください』って。通路を挟んだ場所に座っていた女性の乗客が運転手さんに不審な男がいると伝えてくれたんです」  隣の男は席に座り直すと、新聞をめいっぱい広げて読むそぶりをし始めた。 「アナウンスがよほど恥ずかしかったのか、ついには新聞を被って隠れているような感じでした。結局、目的地までそのままで、バス停に着くと、コートの襟を立て、顔を隠して逃げるように降りて行きました」  現在の長距離バスは席が3列で独立していて隣り合わないタイプのものがあったり、深夜バスも異性が隣り合わないように配慮されているなど、トラブルが起きないよう対策が施されている例が多い。とはいえ、妙な人物に遭遇してしまうケースもある。それだけに、もし違和感を覚える相手に出会ったら、ためらわず周囲に助けを求めることが大切だ。 <TEXT/和泉太郎>
込み入った話や怖い体験談を収集しているサラリーマンライター。趣味はドキュメンタリー番組を観ることと仏像フィギュア集め
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