更新日:2025年01月30日 16:41
エンタメ

『劇映画 孤独のグルメ』が絶好調。驚きの“パリでの恋”は「伏線が30年前の原作漫画にあるんです」久住昌之×稲田俊輔

あの五郎に恋人がいた設定にしたわけ

稲田:五郎って、いわゆる朴念仁的なキャラクターだと思ってたから、パリで恋人と別れるシーンは、みんなショックを受けたんじゃないでしょうか。「なんだよ、リア充だったのかよ!」って(笑)。なぜ、あの五郎ちゃんに突然、色男要素を入れたんですか?
孤独のグルメ博

孤独のグルメ博には、外国人のお客さんも結構いた

久住:当時、編集者と話していて、「五郎は独身だけど、ずっと恋人がいなかったというのもつまらないか」と。五郎は輸入業者として外国に行くから、「パリとかで女性と付き合ってたことにしませんか」と言ったら、編集者が「それいいですね!」って。それでどんどん話を広げて「相手は女優ってどうですか」って(笑)。  稲田:謎のホップステップジャンプで設定が決まったんですね。あのパリの回想シーンは、ドラマ版だと日本で撮っていましたよね。 久住:そうなんです。船橋のマンションの屋上で(笑)。どう見たってパリではない。団地の屋上(笑)。そこにテロップで「パリ」って入ってる(笑)。別カットでは遠景に布団が干してあるのとかも映り込んでたとか(笑)。
劇映画 孤独のグルメ

映画で観客が爆笑したシーン ©2025「劇映画 孤独のグルメ」製作委員会

伝説の「アームロック回」をどう解釈する?

稲田:あと「負け戦」で言うと、一番重要なのが、伝説の「アームロック回」(1巻・12話「東京都板橋区大山町のハンバーグ・ランチ」)。 久住:確かにあれは「大負け」ですね。 (編集部注:客の前で、店主が外国人スタッフ「呉くん」を、ひどく叱りつける。見かねた五郎が、店主にプロレス技をかけてしまう。呉くんは「やめて!それ以上いけない」と五郎を止める) 稲田:あの話で、昔から気になってたことがあるんです。一般的な解釈だと、呉くんの「それ以上いけない」発言は善意に基づくというか、厳しい店主に思いやりをかけた、とされているわけですよね。 久住:そうですね。 稲田:でも僕は、絶対「善意」だけじゃないよな、と思ってて。内心は、もっといろいろあったはずです。 そこを、『トリビュートブック 100%孤独のグルメ』の中で、カレー沢薫さんがズバッと漫画で指摘されていたでしょう。「自分はこれからもここで働き続けなきゃいけないのに、二度と店に来ないであろう通りすがりの客がその場の勢いでひっかきまわす軽率さ、無責任さを責めている目なのでは」と。僕は胸がすく思いがしました。 久住:僕も、あの原作を書くときに「呉くんには複雑な思いがある」と思ってました。でもそこは文章で詳しくは書かずに、解釈は谷口ジローさんにお任せした。そしたら漫画に、呉くんの微妙な表情が描かれていて、こうなったか!と嬉しくなった。 稲田:最後の「あいつの、あの目…」というところ。 久住:そう。どっちとも取れるような、ちょっと悲しいような、困っているような、あの目ね。谷口さんの作画のすばらしさです。実は見返すと五郎にも複雑な顔、ぼんやりした顔、間抜け顔があって、それが物語を微妙に面白くしてる。 久住さん稲田さん ================= 2人のトークのあと、特別編『それぞれの孤独のグルメ』(テレビ東京)11話に登場した女優・平祐奈さんと久住さんのトークショーもあった。
久住さん平さん

平さん(右)と久住さん

最後は、久住さん率いるバンド「ザ・スクリーントーンズ」のライブが(知らない人もいるが、ドラマ『孤独のグルメ』の音楽はほぼすべて、「ザ・スクリーントーンズ」が作って演奏している)。 生演奏に合わせて、お客さんたちも「♪ゴロー、ゴロー、い・の・がしら、ふ~ん」と大合唱。これ以上ない幸せな空間だった。 <文・撮影/日刊SPA!取材班>
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トリビュートブック 100%孤独のグルメ! それにしても腹が減った!
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和泉晴紀、イナダシュンスケ、戌井昭人、宇垣美里、浦沢直樹、江口寿史、大根仁、オカヤイヅミ、小田原ドラゴン、カレー沢薫、河内遙、久住卓也、コナリミサト、島田雅彦、新久千映、夏目房之介、山崎紗也夏、吉田戦車、ラズウェル細木らの寄稿を収録。1320円(税込み)


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