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“給食無償化ブーム”の中、あえて値上げに踏み切った自治体の苦悩「子どもの栄養のためにやむを得ず…」

「全国一律給食費無償化」は実現可能なのか?

[給食費無償化ブーム]の功罪

研究者・鳫 咲子氏

 国会でも議論され、給食現場や自治体から強い要望が出ている「全国一律での給食無償化」は実現可能なのか。学校給食制度に詳しい鳫咲子氏に話を聞いた。 「全国一律で完全無償化を実施するとなると、およそ4826億円の財源が必要です。これは文部科学省の予算の約1割にあたる額。給食費を『教育』の管轄として扱うとすれば省としても負担が大きく、各自治体の財源に頼らざるを得ないのが現状です」  しかし鳫氏は、全国一律給食費無償化は「夢の話ではない」とも語る。 「文部科学省より予算規模の大きい、農林水産省やJAと連携を図り、『食育』をより進めていけばいいんです。小中高の96%を給食費無償化を達成した韓国では、有機肥料を使った食材を給食に使うことで、農業予算の活用に成功しています。日本でも長野県松川町が町の農業振興予算を給食費の補助金に充て、地元の農家から食材を安く調達。町内の小中学校や保育園の給食費の無償化が実現しました」

無償化の財源は税金だからこそ「厳しい目を向けるべき」

[給食費無償化ブーム]の功罪

文部科学省公表データ等より鳫氏が作成

 この形の連携は、地域経済にもメリットをもたらす。 「地元の農家にとって学校給食は安定した契約先となる存在。給食を“地域の食のインフラ”として機能させれば、地域全体の活性化も見込めます」  最後に鳫氏は、無償化地域に住む保護者に助言を送る。 「そもそも無償化の財源は、我々が支払っている税金からきているもの。だから『タダだから文句は言えない』と萎縮する必要はなく、給食が健全に機能を果たしているかどうか厳しい目で見るべきです。それに選挙直前には『無償化ブーム』が起きやすい。しかし選挙後は実施のハードルが高いため、継続的な議論が進まないことも問題です」  子供のための政策が大人の都合に使われていないか。無償に飛びつくのではなく、正しい見極めが重要である。 【研究者・鳫 咲子氏】 跡見学園女子大学マネジメント学部教授。著書に『給食費未納 子どもの貧困と食生活格差』(光文社新書)のほか、共著も多数 取材・文/週刊SPA!編集部
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