「8050問題」引きこもりの息子が死んでも両親は“見て見ぬふり”

また、
ふつうの一軒家で親子が同居している場合でも孤独死は発生するケースがある。
「高齢のご夫婦から『息子が家で自殺したので清掃にきて欲しい』と依頼がありました。私が『死後どれくらい経過してますか?』と尋ねると、『
2〜3日は経過してるのでは?』と言われました。
現場に向かい、玄関の扉を開けると、ものすごい腐敗臭がしました。現場に入ると、2〜3日どころではなく、
死後2週間は経過しているような具合でした。それは7月頃で、一緒に住んでいて腐敗臭に気づかないわけないのですが、おそらく
故意に“見て見ぬふり”をしていたのではないかと疑問が浮かびました」
なぜ、このような状況になってしまったのか。詳しく聞きたい気持ちはやまやまだが、あまり深く突っ込みすぎるのもよくないそうで、グッと堪えたという。
「依頼主と話していてなんとなく感じたのは、
無職で引きこもりの息子さんに手を焼いていたということでした。でもビックリしたのは、リビングの隣の部屋で息子さんが首をつるという選択肢を取ったことです。命を断つといっても外へ行くなどの方法はあったと思うんですよ。それを両親が食事をするリビングからふすま1つ挟んだ部屋で……。
両親はふつうに生活しているので、息子が首を吊ったらすぐわかると思うんですよね……」
家族構成としては、80代の両親と50代息子の3人。いま、ニュースで取り沙汰される機会の多い「
8050問題」の典型例だろう。
亡くなった息子はいわゆる就職氷河期世代だ。
「息子さんが家にいて、何日も顔を見ていないはずなのに声をかけないといった状況に驚きを隠せないですよね。もしかすると嗅覚がおかしくなっていて、匂いに気づかなくなっていた可能性もあります。また、息子さんとの関係性も悪いので、食事なども各々で自由に食べていたのかもしれません。
息子さんは一体何を食べて生活していたのか気になります。外に出て弁当を買ってきて食べてるとかならわかりますが、無職だとそういったことはしないと思うんです。家族で住んでいるのなら食事の時に『ご飯ができたから置いておくわね』くらいは声をかけるはずなんです。そこから推測するに、
家庭はもう崩壊していたのだろうと思いました」
遺書も用意されておらず、和室に体液が染み込んでいること以外は、特に変わった様子はなかったという。
「息子さんの部屋は荒れているわけではなく、かなり整理整頓をされていました。洋服ダンスとベッドがあって、押入れの中も綺麗に片付いていて。柔道の黒帯があったのでおそらく昔は柔道を真面目にやられていた方なんだなと思いました」
それにしても依頼主の対応には違和感を覚える点があったという。
「依頼主がご高齢の場合、必ず別のご家族とか第三者を巻き込んで契約をするようにしているんです。80代や90代になってくると、やっぱり物忘れとか自己での判断能力が低下していたりするので。でも『他に家族はいないし、認知症にもなってないので大丈夫よ!』と少し強い口調で言われたりもして、物の言い方にトゲがあるというか……」
二世帯住宅の孤独死に共通している特徴
さて、二世帯住宅の孤独死に共通するのは、まだ死ぬような年齢ではないにもかかわらず亡くなっていたケースが多いということだ。もしも両親がすでに高齢の場合は顔を見ていないと心配になって会いに行ったりするのだろうが、
“まだ若いから大丈夫だろう”といった慢心が孤独死につながってくるのだ。2〜3日に一度は顔を合わせたり連絡を取ってみたり、生存確認をするべきだろう。
<取材・文/山崎尚哉>
(公社)日本ペストコントロール協会認証技能師。1992年、東京都大田区生まれ。地元の進学校を卒業後、様々な業種を経験し、孤独死・災害現場復旧のリーディングカンパニーである「
ブルークリーン」の創業に参画。これまで官公庁から五つ星ホテルまで、さまざまな取引先から依頼を受け、現場作業を実施した経験を基に、YouTubeチャンネル「
BLUE CLEAN【公式】」にて特殊清掃現場のリアルを配信中!趣味はプロレス観戦