20社を超える事業を展開。海外展開にも挑む
水野:最近、入江さんは海外にも行かれていますが、それもビジネス展開を考えてのことなのでしょうか。
入江:はい、僕は日本だけではなく、海外を相手に稼いでいくことはずっと考えています。僕たちが強いアパレルやコスメを商品にしていきたいですね。ただ、海外では文化なども違いますから、リサーチやマーケティングを丁寧に進めていかなければなりません。
今は海外のマーケットを見ながら、ビジネスをどう展開していくか、現地の人たちも含めて話し合っている段階です。実際、展開していく際には現地企業を買収し、一気に進めていこうと決めています。
水野:その際のマーケティングにはYouTuber活用もされるのでしょうか?
入江:はい。せっかく世界中にYouTuberがいるんですから、現地のYouTuberとコミュニケーションを取って進めていくほうがメリットは多いですよね。
水野:マーケティングにおいてはその国独自のノウハウもありそうですもんね。また、他にもホテル事業や焼肉店の経営もされていると聞きました。
入江:はい。ホテル事業はかなりうまくいっていて、昨年も20%くらい売上がアップし、同時にコストダウンもできました。つまり、ホテルの回転率が上がり、利益率もよくなっているということです。これは「自分たちにホテル事業を成功させるためのノウハウが蓄積されてきている」ことを意味します。現在、都内で20億円から30億円くらいの建物のホテル展開も視野に入れています。
水野:まさにケタ違いですね。
入江:また、六本木にある「Queue(宮)」という焼肉店も経営しています。日本で一番タレントがいる焼き肉店という噂になっていまして。席の半分ぐらいが有名経営者やタレントさんなんていう時もあるようです。

水野:すごい。口コミ評価も軒並み高いんですね。
入江:あまり知られていない話ですけど、日本のポーカー業界も今、僕が切り開いているところです。「ワールドポーカーツアー」(WPT)という、世界三大ポーカー大会の一つを2024年12月に日本で開催しました。

水野:知らなかったです。しかしなぜ、ポーカーなのでしょうか?
入江:今後おそらくはカジノ建設が国内でも進んで行くと思うのですが、まずハードウェアは大手企業が押さえることになるため、入り込む余地がありません。しかし、ソフトウェアであれば、ベンチャー企業でも参入の余地がある。そこで数億円規模の投資を行っておけば、何らかの事業につながるだというという見込みからです。将来の展開に向けた布石を打っているところなんです。
水野:プライベートの話になりますが、DJ活動をされていると聞きました。
入江:ええ。僕は10代から仕事を始めたので、遊んでしまったら成功しないんじゃないかという危機感があって、脇目もふらずに仕事ばっかりをやってきました。ほとんどプライベートを無視してビジネスに取り組んできたんです。
水野:はい。お話を聞いていると、ビジネスにストイックに取り組んできたんだなと感じます。
入江:最近、自分がやりたかったことが全然できていないことに気づいたんです。まだ30代ですが、どんどん年を取っていきますよね。そう思ったら、自分のやりたかったことをやったほうがいいんじゃないか、と。昔、バンドをやっていたときもあったのに、「仕事が忙しいから」と仕事を言い訳にやってこなかったんですよね。
水野:それで音楽活動にも力を入れているんですね。「Nontitle」のエンディング曲で入江さんの曲が使われていましたよね。
入江:そうそう(笑)。DJから音楽も作るようになって、けっこう本気で取り組んでいます。

水野:あのエンディングの歌を聞いたとき、すごくいい曲だなって思ったんですよ。そうしたらヒカルさんの動画で入江さんが歌っていてビックリしました。
入江:2024年12月には代々木第二体育館でライブを開催しました。今年の6月は幕張で「World DJ Festival JAPAN 2025」を開催します。今後も音楽活動は本気で取り組んでいきたいですね。
水野:幕張にはぜひ私も行かせてください。そう言えば、なんでも入江さんは猫を飼っていて、お酒もそんなに飲まないと聞いています。
入江:昔はたくさん飲んでいましたが、今は仕事に熱中するためにかなり控えてますね。夜はなるべく早く帰って猫と遊んでいます。夜はキャバ嬢と遊ぶより、3匹の猫ちゃんと遊んでいるほうが断然楽しいんです。


水野:最後に会社としての経営理念(MVV)や、今後の大きな目標についてもお聞かせください。
入江:僕のミッションは「企業と個人の可能性を最大化し、業界の常識を超えて日本の未来を創造する」こと。大企業と個人の間は絶対的な隔たりがありましたが、今は個人がSNSで大企業を動かすような時代ですよね。 僕たちはその“仲介役”のような立ち位置を担いたい。
ビジョンとしては「日本でナンバーワンのマーケティング・エンターテイメント・カンパニーを作る」です。バリューは以下の3つです。
①スピード(Speed):時代の変化の先を行くスピード感
②創造性(Creativity):既成概念にとらわれず、『新たな価値』を創り続ける
③成超(Growth):能力向上と効率化でROIを高める
現状維持はマイナスだと考えていて、これは社内にも強く言い聞かせていますが、PDCAをしっかり回し続けます。その結果は視聴者やユーザーが判断してくれると思っています。
水野:今後の目標は?
入江:ここ数年の目標は「売り上げ1000億円」です。1社で1000億円はかなり難しいので、トータルで売上1000億円の規模を目指しています。正直、かなり難しい数字だとは思いますが、だからこそ大きく動かなくてはならないと思っています。
水野:非上場で1000億円ということですね。「やらなくちゃいけない」というのはおっしゃる通りですけど、「日本でそういう規模のベンチャー企業がもっと生まれてこないと」という思いもあるのでしょうか?
入江:僕も常々、イーロン・マスクみたいに組織を壊してでも戦える人が出てきてほしいと思っています。国際的な資本を持ったプレイヤーがどんどん攻めてきているのに、日本国内ばかりで争っているのは、たとえるなら「スラムダンク」で全国制覇を目指しているのに部内で殴り合いをしているようなものに見えるんです。
水野:今の“非上場で1000億円”という話に関連して、「上場を目指すのを辞めます」という動画も先日アップされましたね。
入江:簡単に言うと、YouTubeをやっていく身として、自分たちで自分たちの発言に規制をかける環境に行くのはリスクだと思ってやめたんです。視聴者も、僕たちが上場することを本当に望んでいるかといえば、そうではないと思うんです。視聴者ファーストだけを考えたとき、僕たち個人のメリットはあっても、視聴者にとって僕たちが上場するメリットはあまりないですよね。
要するに、視聴者のメリットを最大化するために上場しない選択をしたんです。単純に、もし上場したら僕たちは大金持ちになれる可能性はありますけど、視聴者が得るメリットは正直ゼロに近い。だったら、視聴者と一緒に未来を作るほうを選んだほうがいいという話なんです。
水野:なるほど。IPOして資産を増やすよりも、今応援してくれている人たちとの未来を大事にしたい、ということですね。
入江:そうですね。お金を持つだけより、視聴者と一緒に未来を作るほうが、結果として視聴者ファーストにつながる。僕たちを応援してくれているのは、今まさに見てくれている視聴者ですから。
彼らに対して何が最適なのかを考えたら、「上場しないほうが僕たち自身の未来にとってもベストなんじゃないか」という話を実際にヒカルさんとしました。YouTubeで自由に動けなくなるよりは、今のまま視聴者と面白い未来を作るほうが絶対いいと思ったんです。
水野:最後に、改めて経営者としての信念を聞かせてください。
入江:“競わない経営”を心がけています。他者との競争ではなく、自分たちのビジョンの実現に向かって進んでいく。それが長期的な成功につながると信じています。
今後もYouTubeというメディアを最大限に活用しながら、今取り組んでいるビジネスも大胆に展開していく。その両輪で、これからも常に新しい価値を生み出し続けていきたいと考えています。
「インタビュー後の感想」(水野)
会う前は「YouTube界の秋元康氏」みたいな人物かと思っていたが、実際は業界人というよりはビジネスマインドを持ったマーケッターという印象。ただ発言から「日本を変えよう」という強い想いが伝わってきて、まるで維新の志士と話しているようにこちらも感化されていった。この人間力も多くの人を巻き込んで世の中を動かしている原動力なのかもしれない。
【プロフィール】入江巨之

1985年生まれ。株式会社サムライパートナーズ代表取締役CEO。YouTuberヒカル氏とパートナーを組み、アパレル・コスメブランド「ReZARD」のほか、数々のビジネスを成功に導く。D2Cモデルをはじめ、YouTube番組制作、ホテル開発も手がける。DJ I-RIEとして、ノンタイトルのエンディング曲『beautiful life』をリリース
<取材・文・構成/水野俊哉・高橋真以・掛端 玲>
1973年生まれ。作家。実業家。投資家。サンライズパブリッシング株式会社プロデューサー。経営者を成功に導く「成功請負人」。富裕層のコンサルタントも行う。著書も多数。『幸福の商社、不幸のデパート』『「成功」のトリセツ』『富豪作家 貧乏作家 ビジネス書作家にお金が集まる仕組み』などがある。