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中村アンが振り返る“武器”だったロングヘアーを削ぎ落としたタイミング「もし切るならしっかり意味を持たせたかった」

「香川さんにしかできないな」と思った瞬間

――香川さんとの久しぶりの共演はどうでしたか? 中村:香川さんと初めてお会いしたのは、ボクシング番組でした。作品としては『日本沈没-希望のひと-』(TBS系、2021)以来の共演で、ご一緒できて嬉しかったです。香川さんは、現場をフランクにまとめていただけますし、顔をピクっと上げる表情や間の取り方を見て、あれはもう香川さんにしかできないなと思いました。謎の男を演じる圧倒的な雰囲気もパワフルでした。 ――全編ただならぬ雰囲気が持続する作品ですが、撮影現場はどんな雰囲気でしたか? 中村:共演者それぞれの緊張感がありました。竹原さんは緊張をほぐすために、常に身体を動かして準備されていました(笑)。セリフ合わせでは、お互いに率直な緊張感を共有できて安心しました。後輩刑事として共演場面が多かった宮近海斗さんとはTravis Japanの活動など、仕事の話をよくしました。物語は重々しいですが、お互いに集中しながら関係性を少しずつ深められた現場でした。

「迷いなくショートヘアーに変化した素敵なタイミング」を感じた過去作

――中村さんのキャリアのターニングポイントを考えたとき、金子ありささん脚本ドラマ『着飾る恋には理由があって』(TBS系、2021)で演じた孤高の画家役は、それまでのロングヘアーからショートヘアーにビジュアルを変えたことが大きな話題になりました。金子さんは俳優が持つ特性を最大限引き出す脚本を書く脚本家ですが、同作での髪型の変化を改めて振り返ってみてどうですか? 中村:『着飾る恋には理由があって』は、『グランメゾン東京』(TBS系、2019)でご一緒した塚原あゆ子監督から「髪を切ることはできますか?」とお声掛けいただいたことがきっかけでした。実はそのタイミングを待っていました。ロングヘアーは私の誇りであり、もし切るならしっかり意味を持たせて次のステップにしたいと思っていたからです。大好きな塚原監督に導いていただいて、私の武器であるロングヘアーを削ぎ落として、迷いなくショートヘアーに変化した素敵なタイミングでした。 私が演じさせていただいた羽瀬彩夏は、なかなか自分に諦めがつかずにずっと夢を追っている画家です。化粧っ気がないところは堂本翠と共通するかもしれません。脚本を手掛けられた金子ありささんからは、最後にお手紙をいただきました。私たち俳優は脚本家さんとなかなかお会いする機会がありません。現場で監督から脚本の意図を説明いただきながら、キャラクターを作っていく訳です。それを見届けていただいたんだなと思い、嬉しかったです。 『着飾る恋には理由があって』は、新井順子プロデューサー、塚原監督、金子さんの軸があるから、私も覚悟を持って飛び込める現場でした。これからの方向性も定まり、髪を切ることで自分とは違う人物を演じる感覚をなおさら感じるようになりました。同作以降、毎回髪型によってアプローチを変えられるようにもなって。今回は髪型だけでなく、衣装についてもあえて女性の身体のラインを見せず、キャラクターに合わせて色味も染めていただきました。王道なスーツではなく、動きやすい格好。作業現場で履くような靴など、案を出し合いながらビジュアルを作りました。
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コラムニスト・音楽企画プロデューサー。クラシック音楽を専門とするプロダクションでR&B部門を立ち上げ、企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆。最近では解説番組出演の他、ドラマの脚本を書いている。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu

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