大阪・関西万博のパビリオン建築はなぜ遅れた?一級建築士が抱いた“万博への違和感”
「上の指示どおりに動いただけ」と言えてしまう「多重構造」が生まれるワケ
――こうした多重構造が生まれたのはどうしてなのでしょうか。
森山:最初は欧米由来のアセスメント制度を表面的に取り入れた結果とも言われます。市民意識の高い欧米ならばうまく機能するのかもしれませんが、ことなかれの減点主義が横行する日本では「形だけ透明」「中身は根回し」に陥りがちですね。
――建築界における「責任回避」をなくすには、どのような改善策が考えられるのでしょうか。
森山:誰が言い出しっぺであっても構いませんから、まずは「最終責任者はこの人」という一本線を引くべきでしょうね。
公共工事のような大規模なものは、当然何かしら問題が起こるものだとは思います。ですが、責任者が可視化されていれば、問題が起きた時に原因を特定しやすいし、次に活かせる教訓も残ります。大阪万博の混乱は、まさにその線を引かなかったツケです。
責任を分散させればリスクが減るどころか、かえって品質もコストもコントロール不能になる。それが今回、改めて示されたのではないでしょうか。
私自身は、建築にスピードを求めること自体を否定するつもりはありません。
しかし、スピードだけを優先し、誰も責任を取らないまま形だけ間に合わせようとすれば、当然、工事の欠陥にもつながります。これこそが最悪のファスト化です。万博という世界に向けた晴れ舞台であるからこそ、いま一度、責任の所在をはっきりさせてほしいと感じます。
<構成/週刊SPA!編集部>
建築エコノミスト/一級建築士 1965年岡山県生まれ。88年早稲田大学理工学部建築学科を卒業後、齋藤裕建築研究所に勤務。独立後は戸建住宅から大型施設まで数多くの設計監理業務に従事するかたわら、建築と経済の両分野に精通した「建築エコノミスト」として地方自治体主導の街づくりや公共施設のコンサルティングにも従事。いわゆる「新国立競技場問題」「築地市場移転問題」では早くからその問題点を指摘し、難解な建築の話題を一般にも分かりやすく解説できる識者としてテレビやラジオのコメンテーターとしても活躍する。 主な著書に『非常識な建築業界/「どや建築」という病』(光文社新書)、『ストーリーで面白いほど頭に入る鉄骨造』(エクスナレッジ)など。
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