更新日:2025年05月01日 11:37
ニュース

日本にとってウクライナ侵攻は他人事ではない! 高校チュータイ外交官が警鐘

ウクライナ国内にいたロシア系民族の不満

EUとウクライナ もっとも、ウクライナ国内には違う意見もあった。  ウクライナは「汚職大国」として知られるほど汚職が多く、その国の政治状況のクリーンさを表すランキングでは180ヵ国のうち105位と低水準。  ちなみに汚職が多いとEUには入れないので、ウクライナの汚職の多さはEU加盟にも障害となっている。ウクライナの経済をみても、GDPはソ連時代よりも6割にまで落ち込み、国民の生活は一向に豊かにならない。  そもそもウクライナの中でもロシア系住民の多い東部は、地下資源が豊富なことからもともと工業が発達し、住民の生活も豊かだった。  しかし、ソ連が崩壊し、ウクライナが国として独立すると、その東部地方は貧しくなっていく。東部の人の所得は、ソ連時代よりもウクライナが独立してからのほうが低くなった。そのようなことに不満を持っていた人もいたという実態もあった。 「このようになかなか国内がまとまらない状況の中、コメディアン出身の大統領が誕生します。それが今もウクライナを率いているゼレンスキー大統領です。ゼレンスキー大統領はそれまで以上にNATO加盟に積極的でした。  ウクライナは地理的にみて、ロシアにとって裏庭のような存在です。しかも、ロシアにとって大事な海への出口もあります。だから、ロシアとしてはウクライナがNATOに入るのは絶対に嫌なのです。  一方、ウクライナのNATO加盟を絶対に阻止したいロシアは、『ロシア系住民がウクライナ東部で辛い思いをしているんでしょ、だったらロシアがウクライナに行って助けてあげるよ』ということを口実に、2022年2月、ウクライナに攻め込んだのです」

ウクライナ侵略を仕掛けたロシアの“誤算”とは

 このように、ウクライナのNATO加盟に向けた動きが決定的な引き金となり、ロシアによるウクライナへの侵略が始まったのだった。  逃げなかったゼレンスキー大統領は、ロシアにとって想定外だった…  ロシアは当初短期決戦でいけるだろう、と考えていた。クリミア併合のように、短期間で一気に占領して、他の国が手を出せないうちに終わらせてしまおう、元コメディアンの大統領なんてすぐに逃げるはずだと思っていたようだ。 「しかし、そこには誤算がありました。ウクライナ軍は思いのほか善戦し、ゼレンスキー大統領も逃げ出すどころか、毎日のようにSNSでの発信を続け、国民を励まし続けました。  でもこれは偶然の産物ではありません。実はウクライナも2014年にクリミアを取られてから、ロシアの脅威を黙って見てきたわけではなく、ウクライナは着々と軍の改革をしていたのです」
次のページ
まとまらなかったウクライナがロシアの侵略によって団結した
1
2
3
4
5
1984年埼玉県生まれ。高校時代に2度の留年と2度の中退を経験。一念発起して大検を取得後、青山学院大学文学部に進学。早稲田大学法科大学院を経て、2010年に司法試験および国家公務員Ⅰ種試験に合格。2011年に外務省入省後、スペイン駐在を経て、中南米外交やアジア外交に携わる。外交官として働く傍ら、国際情勢やキャリア設計についての講演活動も行う。著書に『高校チュータイ外交官のイチからわかる! 国際情勢』がある。
記事一覧へ
13歳からの国際情勢 13歳からの国際情勢

激変する世界情勢……現役外交官が
あらゆるニュースの「なぜ」をわかりやすく解説

【関連キーワードから記事を探す】