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「コメ農家が国に殺されかけている」価格高騰も農家に恩恵なし…「令和の百姓一揆」代表が語った国への怒り

大規模農家には支援が、小規模農家にはまるで“離農奨励金”が

誰がコメ農家を殺すのか

大規模農地は大型機械も導入可能。生産量の増加が期待される

 国からの支援や補助金は、期待できないのか。 「ないね。基本的に、今の日本の農業政策は、小規模のコメ農家はどうぞ潰れてくださいという考えだ。現に、効率的かつ合理的に、安価なコメを生産できたほうがいいといわんばかりに、大規模農家だけを支援している。『大規模化を目指すなら、農業機械の3分の1から半額分の費用を国が補助しますよ』と」  大規模化は、農家の高齢化や増え続ける耕作放棄地などの解決策として期待されている。だが一方で、小規模の農家への支援はあまりに手薄だ。
誰がコメ農家を殺すのか

菅野氏の養鶏場。「くず米は鶏のエサになり、鶏のフンは畑の肥料になる」

「我が家のような家族農業は支援の対象外だし、あるのは、農地を公的な機関に預けて離農していく人々に支払われる『農地集約協力金』だけ。俺らは『離農奨励金』って呼んでいる。支援も補助も収入もない状態で、農業機械が壊れたらもう何もできない。ウチの集落では、10年前までは40戸中30戸が農業をやっていたが、20戸がやめた。今後、離農はさらに加速すると思う」  帝国データバンクによると、’24年はコメ農家の倒産や休廃業が相次ぎ、全国で42件が生産現場から消えた。年間の最多件数を更新した。

離農が止まらない日本のコメの未来

誰がコメ農家を殺すのか

経済学者・鈴木宣弘氏

 農業経済学を専門とする、東京大学の鈴木宣弘教授は「そもそもコメの価格高騰の根本的な問題は、国の減反政策にある」と指摘する。 「減反政策とは、コメ余り問題を解消するべく、コメの作付面積を制限して生産量を抑制する制度です。1971年から50年近く実施され、’18年度に廃止されました。しかし、実際は今も毎年のコメの生産量の目安を国や農協から指導されたり、水田を使ったほかの作物への転作に補助金が出されたりして、コメの生産調整が行われています。だからコメの生産量は、いまだに右肩下がりです」  また、“コメの流通の自由化”も大きな影響を与えた。 「1994年に廃止された食糧管理制度では、国がコメ農家から高く買い、消費者には安く卸していた。国がコメを管理していたのです。でも、その制度が廃止されると、コメの価格は大手小売りチェーンが『いくらで売りたいか』で決まるようになった。その結果、農家が“買い叩かれる”という状態に陥ってしまったのです」  コメ農家を取り巻く過酷な現状。鈴木氏はさらに続ける。 「コメの価格の高騰は、猛暑で生産量が減ったり、インバウンドで外国人の消費量が増えたりしたことだけが原因ではありません。減反政策やコメの流通の自由化、支援の手薄さなど、いくつもの要因が重なり、離農が進んでコメ自体も減った。国ができることは、生産量を農家に任せてコメの増産を奨励し、農家の所得を支える直接支払いを行い、買い取る備蓄米の量も増やす。そして学校給食を核にして、地元産のコメを地元で消費するような、地域の循環の流れをつくることが大切です」  山形のコメどころでは、もうすぐ田んぼに水が入り、豊かな田園風景が広がるはずだ。この風景はいつまで見られるのか。守ることが、できるのだろうか。 【菅野芳秀氏】 1949年生まれ。「令和の百姓一揆」実行委員会代表。菅野農園を営む。近著に『生きるための農業 地域をつくる農業』(大正大学出版会) 【経済学者・鈴木宣弘氏】 東京大学大学院特任教授、名誉教授。専門は農業経済学。著書に『世界で最初に飢えるのは日本』(講談社)、『農業消滅』(平凡社)などがある 取材・文・撮影/週刊SPA!編集部
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