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「刺青は母に対するささやかな復讐」夜職を転々とする23歳女性の壮絶半生。将来の展望は「ない」

中学受験に失敗し、母親が目の前で自殺未遂…

 自らの分身である娘を磨き上げるように、母親はあおこさんに投資を惜しまなかったのかもしれない。だが必ずしもその期待に応えられたわけではなかった。 「結果的に言うと、中学受験は失敗して、公立中学校に進学することになったんです。もともと、私は勉強ができないんですよ。通っていた塾の先生からも、三者面談で『こんなに勉強のできない子はまずいです』と言われて。それがきっかけで、家に帰ってからヒステリーを起こした母が自分のお腹に包丁を突き立てて、私の目の前で自殺未遂を図りました。『お前が金食い虫なんだよ!』みたいなことを叫んでいたように思います」  母親の言動は常軌を逸しているが、当時のあおこさんは気がついていない。 「自分がバカなのが悪いと思っていました。怒られるのはもちろん嫌でしたが、自分の家の母親がおかしいとは思っていなかったと思います。中学受験に失敗してからは、母も『こいつはもう何をやらせてもダメだ』みたいな態度になって、並行して習っていたクラシックバレエに力を注ぐようになりました」

一番嫌だったのは「所有物を捨てること」

 果たしてその判断は奏効した。中学時代、クラシックバレエでの入賞経験があったあおこさんは、高校に推薦入学することができた。だがハッピーエンドで話は終わらない。 「小学生のときはわからなかったけれど、中学生くらいになると自分の家がおかしいことに気づいてきて。体罰こそなかったものの、一番嫌だったのは、勉強や習い事で結果が出せなかったときに罰として私の所有物を捨てることですね。洋服や化粧品に興味が出てきた頃だったので、『こんなのを着ていたら本当に病んでしまう』などと口出しをされるのも我慢できなかったです。  昔からのそうした積み重ねがあって、とうとう爆発して、家出をしたりしていました。高校生になるとコンカフェでアルバイトをして、自分でお金を稼ごうと思ったんです。ところが通っていたのが校則の厳しい女子校だったもので、アルバイトは禁止。学校側の知るところとなって、停学処分を食らい、そのまま退学しました。通信制高校に行くことにしました」
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展望は「ない」「はやく死にたい」
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