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「刺青は母に対するささやかな復讐」夜職を転々とする23歳女性の壮絶半生。将来の展望は「ない」

両親とは、ほぼ絶縁状態…

 現在、両親とはどのような関係性なのか。 「20歳のときに家を出たとき、絶縁する覚悟で飛び出しました。そこから、母とはたまに連絡を取ることはあるものの、あまり生活には関係ない存在だというのが本当のところです。父とは高校生の終わり頃から険悪になって、まともに口を聞いていない日が続きました。つい最近、大病をしたらしく、『どうしても来て』というのでお見舞いには行きましたが、それ以降何も音沙汰はありません。何かにつけて私を監視したい母は、私のSNSを特定して刺青を入れたことを知ったようで、泣いていました。ピアスや染髪も許せないような人ですから、そうでしょうね」

展望は「ない」「はやく死にたい」

 BAR店員としてSNSでも徐々に知名度を上げてきているあおこさん。これからの展望を聞くと、「ないです」と即答した。続けて、「昔から、はやく死にたいと思っているんです」とも。だが人生に絶望した人が、整形や刺青で自らの容姿を磨き上げるだろうか。すると、答えは意外なものだった。 「私はずっと母から『可愛くない』と言われて育ったので、自分の容姿に自信が持てなくて。隠れて洋服や化粧品を買っているのがバレたとき、母は『あんたは可愛くないから化粧しても無駄』などと言われて、それがすごくショックでした。だから整形をしたり刺青をしたりして、今の私が思う“可愛い”をとことん追求することが、母に対するささやかな復讐でもあるんです」 =====  欲望が入り乱れる、猥雑な街で酒を提供する美女の心の虚空。取材の最後、あおこさんは、「来月もまた、目の整形をしようと思って」と笑った。自らの美を、行けるところまで追求して、散るときは潔く。悲しくも美しい彼女の半生が、どこかで光り輝きますように。そう切に願う。 <取材・文/黒島暁生>
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki
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