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「子供一人ひとりの“違和感”を大切に」現役中学生の研究成果が100万回再生。“研究の楽しさ”と出会った科学教室の“斬新な教育方針”とは

子どものなかにある“違和感”を大切にする

さて、才能を伸ばすために大事な要素とは何なのか気になるところだ。キーワードは「自主性と達成感」だという。 「子ども一人ひとりにさまざまな“好き”や“興味”があります。これを前提にどんな研究材料が合うのか、私は必死で考え、提案します。そして、まずはニコッとするぐらいの小さな成功体験を作るんです。その次は、ちょっと難しいところを目指して、ちょっとした挫折をさせる。あえて答えは教えないんです。 どうするかというと、子どものなかにある“違和感”を大切にして、『どうしようか?』と一緒に考える。この積み重ねで、挫折を経た成功を体験すれば、ずっと大きな喜びが生まれます。『疑問を持ったところからのひらめきがすごいね』などと褒めると、自己肯定感も上がりますから。試練を与えて、一緒に考えて前進する……その繰り返しです」(加世田さん) もちろん、どの子どもに対しても同じやり方が通用するとは限らない。ケースバイケースで対応しているそうだ。 「主体的に行った成功体験を繰り返し、その楽しみを知ることができれば、さらに頑張る気が起きるはずです。たとえば、研究コンクールで賞が取れなかったときでも、積み重ねに慣れた子だったら、“レジリエンス力”がありますから気を取り直して頑張ることができます。 また、その場しのぎで褒めたとしても、子どもは“大人の嘘”を見抜きます。きちんと問題点を指摘しながら、褒めるに値することを心を込めて褒める。このような積み重ねが奏功して、50ページにも及ぶレポートを書くようになった小学生もいるんです」(加世田さん)

以前は新しいことに挑戦するのが苦手だったが…

うちらぼ

宮崎香帆さん

宮崎さんと共に行った研究は、「お菓子教室の先生が、『糖化でシミが増える』と言っていた……」という雑談からスタートしたそうだ。糖化の進行を可視化するために、まずは科学的に統一されたルールをもとに数値化した指標が必要となった。 調べてみると、まだそのようなデータは世界に存在しなかった。それだけではなく、さまざまな病気の予防にもつながる研究になり得るということが明らかに。おのずと宮崎さんは前のめりになっていった。 「先生が『何でも知ってるわけではない』と知ることによっても、子どもの自立心が生まれると考えています。宮崎さんは家でも研究を続け、実験に使った容器は1300本にも及んだそうです。自己肯定感が身についているこそ、トライアンドエラーを繰り返すことができたんだと実感しました」(加世田さん) 宮崎さんには、「研究を通して得られたこと」があるという。 「学校でやる『実験』は、結果がありきで進めていきます。片や誰も知らないことを調べるのが『研究』です。『研究』は大人でもどうなるのか分からないことが多く、実験方法に関しても自分で考える必要があります。以前は失敗を恐れて、新しいことに挑戦するのが苦手でした。でも、今はたとえ失敗しても加世田先生が一緒に解決策を考えてくれるので、新しい世界を探求することに面白さを感じるようになりました」(宮崎さん)
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イギリスの学校で見た驚きの光景
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歌手・音楽家・仏像オタクニスト・ライター。「イデア」でUSEN1位を獲得。初著『生きるのが苦しいなら』(キラジェンヌ株式)は紀伊國屋総合ランキング3位を獲得。日刊ゲンダイ、日刊SPA!などで執筆も行い、自身もタレントとして幅広く活動している
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