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「子供一人ひとりの“違和感”を大切に」現役中学生の研究成果が100万回再生。“研究の楽しさ”と出会った科学教室の“斬新な教育方針”とは

イギリスの学校で見た驚きの光景

失敗と成功が「自主性」を伸ばし、その上「達成感」にも結び付く。日々研鑽を積み続ければ、十人十色の才能が発展し、突出した人材が生まれる土壌になる。これが加世田さんが理想とする教育のあり方だという。 「現行の日本教育では、個人の才能を伸ばすのが難しい側面があると感じています。イギリスの小学校で算数の授業のを見学したときに印象深い光景を目にしました。授業の途中なのに帰り支度をはじめた生徒に対して、教師が『この子は今からバイオリンをしに行きます』と一言。あっけにとられた私は『なぜ授業を受けないんですか?』と質問したのですが、『バイオリンの才能があるからです。何か問題でも?』と返されて……」(加世田さん) イギリスには、「個々の性質に伴う取捨選択をするのは当然」という価値観が当たり前。子どもたちが生き生きする姿を目の当たりにした加世田さんは、能力を伸ばしてあげる環境を整えることが、成熟した社会の形成につながるのではないかと感じた。 「海外だと長いスパンでの研究でも躊躇しないケースが多く、投資も惜しみません。日本にも同様の視野が必要ではないでしょうか。『うちらぼ』でも、子どもが答えにたどり着くまでの時間が待てない親御さんの姿を見ることがあります。でも、どこに引っ掛かっているのか見極めた上でヒントを与えなければ、結局分からないままになってしまうのです」(加世田さん) 研究の世界では、“世界初”や“世界唯一”であることが求められがち。とはいえ、大切なのは「自分らしさとは何かを知っておくこと」だと加世田さんは主張する。 「子どものころ、学校から家までを毎日別のルートで帰っていました。スケールが小さい話かもしれませんが、その時は本気で『こんな組み合わせを考えているのは世界で僕だけだ』と思っていたのです。おそらく、その時点で『オンリーワンとナンバーワンは違う』と感覚的に理解していたのだと思います。研究者として、それから子どもたちと関わってきた人生を通して、自分らしく生きることが“世界一”なんだと身にしみて感じます」(加世田さん) ===== 個性の良し悪しに正解はない。にもかかわらず、他者と比較し、自分の持っているものをつまらないと思ってしまうこともある。当然、何の個性を持たずに生まれてくる人間は一人もいない。生まれながらにして、“世界で唯一の存在”と考えるべきなのだと、取材を通じて感じた次第だ。加世田さんの挑戦を心から応援したい。 <取材・文/SALLiA>
歌手・音楽家・仏像オタクニスト・ライター。「イデア」でUSEN1位を獲得。初著『生きるのが苦しいなら』(キラジェンヌ株式)は紀伊國屋総合ランキング3位を獲得。日刊ゲンダイ、日刊SPA!などで執筆も行い、自身もタレントとして幅広く活動している
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