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「順番待ちの列を守らない、ゴミ放置は日常茶飯事」外国人観光客の“マナー違反”に頭を抱えるキッチンカー店主の葛藤

警察に相談しても「効果はなかった」対策の限界

 後藤さんのキッチンカーは駅前が定位置だった。駅員とも連携を取り、こうしたマナー違反に対して自分なりに対策を講じたという。  テーブルを出すのをやめ、英語で注意を呼びかけるメッセージをキッチンカーに貼り出した。しかし、「効果はなかった」と後藤さんは肩を落とす。 「相変わらず列の割り込みなどは止まらず、騒音騒ぎ、ゴミは駅のトイレに大量に捨てられて、むしろクレームがきてしまいました」  警察にも相談したが、「現行犯でないと難しい」「外国人観光客なので多少多めに見てほしい」と言われ、相手にされなかったという。キッチンカーの運営会社にも報告をあげ、セキュリティの強化や販売場所の変更などの希望を伝えてみたが「私の説明が悪かったのかもしれません」。それが通ることはなかったのだ。

「日本のマナーや文化を勉強してから来てほしい」

外国人観光客 次第に後藤さんは外国人観光客に対して複雑な感情を抱くようになった。 「個人的にはインバウンドに対して嫌悪感があります。ただ、大きな経済効果や地域活性化など、メリットとして挙げられる点も多いので難しい問題だと思いますね」  とはいえ、「最低限、日本のマナーや文化を勉強してから来てほしい」という思いは強い。 「日本に入国する前に“マナー検定”のようなものがあればいいなって。もっと日本への理解が深まり、気持ち良く国際交流ができる日を私は待ち望んでいます」  後藤さんは生真面目で優しい性格なのだろう。そのぶん、打ちのめされてしまったのだ。結局、キッチンカーの仕事を退職し、現在は“療養中”だという。外国人観光客の数は増加の一途を辿っているが、これ以上ひどい事態に陥らないことを願う。 <取材・文/藤山ムツキ>
編集者・ライター・旅行作家。取材や執筆、原稿整理、コンビニへの買い出しから芸能人のゴーストライターまで、メディアまわりの超“何でも屋”です。著書に『海外アングラ旅行』『実録!いかがわしい経験をしまくってみました』『10ドルの夜景』など。執筆協力に『旅の賢人たちがつくった海外旅行最強ナビ』シリーズほか多数。X(旧Twitter):@gold_gogogo
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