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気軽な散歩やウォーキングに1万円の靴は必要ナシ。ワークマン2900円の靴で十分といえる理由

1万円の靴より、4000円のシューズとインソール

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ワークマン「ハイバウンスレイン」。写真は公式HPより

1万円前後のウォーキングシューズは全般的に通気性が悪いです。合皮・天然革を主に使っているからですが、歩く以上は当たり前に蒸れます。「雨にも耐えられるから、足になじんでくるから」という理由で革や合皮が多く使われていますが、雨の日は生活防水のランニングシューズを履けば良いだけのこと。ワークマンでは2900円で売られています。その名も「ハイバウンスレイン」。 リーボックやアディダスが販売している1万円前後のモデルよりはるかに軽くて歩きやすい。でありながら、防水性はこちらが上。安定感、クッション性、すべりにくさも個人的にはワークマンに軍配を上げます。抜群に通気性が良いわけではありませんが、合皮や防水革よりはるかに軽く、素材が足になじむまで待つ必要もありません。 こう考えると高価なウォーキングシューズの存在意義がわからなくなります。合皮のように安い材料、前時代的なデザイン、屈曲性の悪い底。正直な話、アマゾンで2000~3000円で買えるファッションスニーカーと機能は大差ありません。1万円のウォーキングシューズ単体を買うより、4000円の本体と2000~4000円の本格インソールを組み合わせたほうがはるかに足にも歩行にも良いと断言します。
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シダス「マックスプロテクト・ウォーク」。写真は公式HPより

ワークマンスニーカーでさえ、インソールひとつで歩きやすさが大化けします。インソールはクッション性はもとより、カカト周りの安定と「シャンク」と呼ばれるプレートによる力の連動が必須なのですが、大手スポーツショップのゼビオなどに置かれている、フランス・シダス社の「マックスプロテクト・ウォーク」(製品はアジア製、2970円)を使えば、カカト周りから関節のブレを抑えて、靴のクッションと性能をフルに発揮させることができます。大型スポーツ店に置いていあるサンプルを試すと、その場で効果を体感することができるでしょう。

頑張りすぎが逆効果? 歩行も靴選びもゆるく構えてちょうどいい

ウォーキングシューズの擁護をあえてするなら、脚力の衰えたシニアにはたしかにやさしいとも言えます。底が曲がらず、ローリング機能が効くので「体重を乗せさえすれば」足が勝手に前に出ます。しかし、逆を言えば自力でガンガン歩けるなら高価な専門靴を買う必要はありません。過保護なローリング機能はかえって足の握力を落とします。 よく「一日一万歩運動」とショップやクリニックで聞いて、「一万歩も歩けない……」と勝手に落ち込んでいる方も見かけますが、これは万歩計メーカーの宣伝コピーで、科学的根拠はありません。2023年の京都大学の研究では、週に1~2日だけ1日あたり8000歩の歩数で全死亡リスクが14.9%低下することがわかっています。また同様に、イギリスのケンブリッジ大学とクイーンズ大学ベルファストの研究チームによれば、「1日(=毎日換算)10~20分の早歩きでも、心疾患、脳卒中、がんなどのリスクを有意に低下させて早期死亡のリスクを10%減らす可能性がある」とされています。こう考えるとハードルがぐっと下がるでしょう。筆者の体感も同じです。 ウォーキングや散歩は適当に気の向くままでいいのです。クソ真面目に「まずは靴から!」と考えるのは、靴屋のいいカモです。肩ひじ張らずにお気に入りの靴で気軽に歩きましょう。
イギリスのノーサンプトンで靴を学び、20代で靴の設計、30代からリペアの世界へ。現在「全国どこでもシューフィッター」として活動中。YouTube『足と靴のスペシャリスト』。靴のブログを毎日書いてます『シューフィッター佐藤靖青(旧・こまつ)@毎日靴ブログ』
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