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客単価1200円を超えたCoCo壱番屋の「高級化」に客離れが止まらず…“8か月連続前年割れ”の苦境に打開策はあるか

本部とFC加盟店のWin-Win関係

本部はFC加盟店という安定的な販路を確立し、食材を卸売りして収益を上げている。 そして、卸した食材に一定のマージンを加算し、それが本部の儲けの源泉だから店舗数の増加は収益の拡大要因だ。 また、通常のFCなら必要なロイヤリティも必要なく、加盟店としてはありがたいもの。本部からすれば店舗が儲かるように支援し、店を継続してもらうのが収益機会の安定に繋がり、Win-Winの関係が構築できるのである。 国内店舗の1店舗平均売上は640万円、来店客数は5,295人、客単価は1,208円となっている。開店当初からハウス食品との協業を強化しており、今はハウス食品グループの子会社だから、ココイチへの支援体制も万全な点も強みだろう。

客離れは続くが競争優位は維持

飲食業は開業しやすいが廃業率も高い。約半数が2年以内に廃業し、10年後の生存率は1割程度である。 業態の陳腐化サイクルが早いのが業界特性で、次々と新たなコンセプトの店が出現してくるなど、変化が激しい外食業界だ。そういった厳しい環境の中で、ココイチの事業継続率は9割と高い。 その要因は、カレーという需要が安定した国民食である商品面と、ブルームシステムといった運営面に競争上の差別的優位性があることを証明するものだ。 しかし値上げ後、客数が減少しているのも事実。高くてもまだ価値を享受できる範囲であれば、お客さんはけっして離れないが、顧客提供価値の向上に向けた店づくりが必須で、顧客ロイヤリティの更なる向上と、顧客基盤の盤石化が経営課題だ。 壱番屋は本業のカレー事業で運営基盤が揺らいでいるとはいえ、まだまだ市場では競争優位を維持している。 その環境下で、将来を見越して、豊富な資金を活用してM&Aを仕掛け、多様な業態を傘下に収める成長戦略を推進中だ。 今後も企業全体の価値向上に向けて本業を強化しながら、環境の変化に迅速、且つ柔軟に対応して、多様な食文化の提案をされることを期待したい。 <文/中村清志>
飲食店支援専門の中小企業診断士・行政書士。自らも調理師免許を有し、過去には飲食店を経営。現在は中村コンサルタント事務所代表として後継者問題など、事業承継対策にも力を入れている。X(旧ツイッター):@kaisyasindan
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