更新日:2025年06月02日 17:25
ライフ

ママ友会で「夫に対する愚痴」を聞くのがつらかった。“夫に不満がない”女性が立ち上げた結婚相談所、特色は

夫婦関係は歯の健康とよく似ている

――武嶋さんの代名詞でもあるファミリーコーチングですが、どのようなことを伝えているのでしょうか。 武嶋愛:私は夫婦関係は歯の健康とよく似ていると思っています。歯磨きは毎日しますし、夫婦も基本的に毎日コミュニケーションを取るでしょう。しかしそれだけではすれ違い、つまり磨き残しが生じる場合が往々にしてあります。そこでプロフェッショナルケア――歯科医院へ行ってきちんとプロに診てもらう必要がありますよね。その役割を引き受けようと考えているんです。  ワシントン大学の心理学の名誉教授に、John Gottmanという方がいます。その方がおっしゃっていることで、私の肌感覚とも合致するのは、「夫婦の意志決定をおこなうとき、夫が妻の意見、提案、感情を取り入れない夫婦の8割以上は数年以内に離婚する」というものです。  良好な夫婦関係を継続していくうえで、お互いのことをよく知らずにコミュニケーションをしていてうまくいくはずがありません。人間は自分の意見を蔑ろにされれば大切にされていないと感じますし、そのことを頭ではわかっていても行動できるかは別の問題です。私が外部の立場から、夫婦をサポートしていくことによって、少しでも健全なコミュニケーションに近づけるようにしていくことができます。

「夫の愚痴」を聞く時間がつらかった

武嶋愛さん

ミクロ視点から日本を明るくしていきたい

――今後の展望を教えてください。 武嶋愛:簡単に言うと、夫婦関係がよくなることによって、将来的に子どもたちが「結婚っていいな、大人になるのって楽しそうだな」と思えるようになってほしいんです。  私自身、ママ友が集まれば夫に対する愚痴ばかりで、「私は夫に不満がないから、ひたすら愚痴を聞いている時間がつらい」とずっと思っていました(笑)。せっかく結婚したのだから、不満を言うのではなく、お互いのことをずっと愛し続けられるようにいられる方法を考えるべきだと思うんです。そして、子どもに対して「私たちが愛し合っているから、あなたが生まれた」と伝えられたら素敵ですよね。  残念ながら今の日本は明るいニュースが少ないですが、最小単位である家族から変えていけたら、希望に満ちた未来が描ける。そんな風に本気で思っています。 =====  家族を作るのに免許はいらない。一定の年齢に達すれば誰でも作れるものだからこそ、それが幸せな場所であるための努力を怠ってはいけないのだろう。家族から社会を変えていくために、家族という密室に分け入るコミュニケーションの専門家が必要になる。そんな武嶋さんの指摘は鋭くも、愛情に満ちている。 <取材・文/黒島暁生>
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki
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