仕事

シャンプー1つで6000万円売った車谷セナの「名前も年齢も明かさないミステリアス・ブランディング」

「シャントリボディ」の一般名詞化を目指す野望

水野:シャントリボディの開発背景は? 車谷:もともとビジネスアイデアの1つとしてありましたが、新しい概念を市場に浸透させるには膨大な広告費がかかるため、優先度は低かった。でも「Nontitle」という場があれば、広告費をかけずに認知してもらえるチャンスだと。 水野:一般名詞化を目指すとは大胆ですね。 車谷:そうです。ジョンソン・エンド・ジョンソン社の商標名である「バンドエイド」が「ばんそうこう」の一般名称として呼ばれるように、シャントリボディという商品名を一般名詞化させたい。そのためにはドラッグストアなどの流通に乗せる必要があり、現在はファミリーラインの開発を進めています。 水野:売上目標はどの程度ですか? 車谷:番組では100億円と言っていますが、実際は270億円を目指しています。これは私が計算した現実的な最高値です。その先にはIPO(新規公開株式)も視野に入れていますが、資本関係の壁もあるので、最悪エグジットの可能性もゼロではありません。 水野:御社の強みは何でしょうか? 車谷:4人の役員それぞれが異なる強みを持っていて、私はリーダーシップと推進力、松葉は映像制作、お持ちはお客さま対応、名越はtoB営業と明確に役割分担しています。「Nontitle」で同じ苦労を乗り越えた絆があるからこそ、チームワークが生まれているんです。

「会社の倒産を経験した家庭で育った」逆境から生まれた経営哲学

水野:経営者としての資質はいつ頃から? 車谷:小学4年生と中学2年生の時に、自分の人生を紙に書いて考える時間をとりました。兄弟が多く、みんな性格もやっていることも違うので、それぞれの良いところを取り入れるポートフォリオが形成されたのかも。 水野:経営者を目指したきっかけは? 車谷:小学生の頃には決めていました。実は父も経営者で、幼い頃からビジネス書を読むよう指示されていました。ただ、父の会社は倒産して自己破産している。 水野:その体験が今の経営に影響していますか? 車谷:当時、地元では豪邸と言われる家に住み、地主でもありました。でも一気に全部失って、みんなが通る通学路にあるボロアパートに引っ越した。ドアも壊れていて…恥ずかしさや悔しさはありましたが、「楽しむしかない」と思っていた記憶があります。 水野:尊敬する経営者はいますか? 車谷:柳井正さんですね。ユニクロという“ただの服”とも言えるカテゴリーで世界的企業に育て上げた狂気を感じます。IT企業でもなく投資でもなく、衣食住という基本的なジャンルで成功されている。そこに可能性を見出しています。 水野:今後の展望をお聞かせください。 車谷:シャントリボディの一般名詞化と並行して、新しい概念商品も今年秋にリリース予定です。映像制作事業も好調で、上場企業からの依頼も増えています。テレサの文化を体現するこの一体感のあるオフィスを大切にしながら、270億円企業を目指します。 【インタビュー後の感想(水野)】 この連載インタビュー中に始まった「NONTITLE」で特別な存在感を放っていたセナ氏。 中性的なビジュアルのイケメンながら強気で空気を読まないキャラというイメージだったが、実際会って話を聞くと、気合の入った本物の起業家だと感じた。  経営している会社もイケてる人達が、流行りのビジネスをやっているように思われそうだが、オフィスは昔のテレビ制作会社のような雰囲気だった。ユーチューブ発のスタートアップとして数少ない成功例になって欲しいと思う。 【プロフィール】車谷セナ 年齢・名前不詳の起業家、美容系YouTuber。株式会社TELESA代表取締役。起業リアリティショー「Nontitle」からできた会社で、頭から身体まで一気に洗う魔法のシャンプー「シャントリボディ」を開発。「通販の虎」出演で約6000万円の売上を達成。 <取材・文・構成/水野俊哉・高橋真以>
1973年生まれ。作家。実業家。投資家。サンライズパブリッシング株式会社プロデューサー。経営者を成功に導く「成功請負人」。富裕層のコンサルタントも行う。著書も多数。『幸福の商社、不幸のデパート』『「成功」のトリセツ』『富豪作家 貧乏作家 ビジネス書作家にお金が集まる仕組み』などがある。
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