ライフ

中年を襲う“痛みの地獄”──三叉神経痛から慢性疾患まで、人生を脅かす疼痛の正体

20代後半から30年近くも慢性疼痛に苦しめられた女性

三叉神経痛、心臓腫瘍はともに突発的に訪れる痛みとその恐怖が特徴的だが、一方で20代後半から30年近くも慢性疼痛に苦しめられた女性がいる。飲食業を営む沢田多恵子さん(仮名・58歳)だ。
最新[中年を襲う痛み]研究

投薬は強烈な副作用をもたらしたが、「外見の変化がこたえた。断薬を決意できたきっかけにもなったが」と沢田さん

「私が患ったのは、膠原病。原因不明の難病と言われ、頭痛、関節痛、高熱、体調不良と“ありとあらゆる苦痛”が襲ってきます。全身に吹き出物が出たり、薬の副作用でひどくむくんだり。うつやパニックを起こすこともあった。人生の半分はこの病気と付き合ってきました」 あらゆる痛みが日替わりで襲ってくる毎日。副作用の強いステロイド薬を10年以上飲み続けたが、投薬での治療にも限界があった。 一時期は自殺も考えたという沢田さんだが、40代になって知人から聞いた温浴療法が生活を変えた。

痛みを制御する第一歩は「カラクリを知ること」

沢田さんが言う。 最新[中年を襲う痛み]研究「東北地方にある湯治場に通うようになると、徐々に苦痛が和らぐ感覚を得たんです。湯につかるとのぼせるので、湯気に2、3時間あたる。『私にはこれが一番効く』と実感がありました。以来、痛みの兆候が出ると湯治場に行く、を繰り返しています。症状がひどくなる時は前兆があるので、悪化する前に手を打つ。それまで感じていた発作的な激痛は減り、痛みとともに生きるのも人生だと思えるようになった」 このように痛みをコントロールする術は、尿管結石を患った男性からも聞くことができた。個人事業主の野村隆さん(仮名・44歳)だ。
最新[中年を襲う痛み]研究

尿管結石に襲われ、救急車で病院に運ばれたという野村さん。「二度と味わいたくないがゆえ、予防に努めるようになった」

「痛みの王様というだけあって、半端じゃなかった。ただ、振り返れば前兆があって、自分の場合は不摂生が続いたこと。今もビー玉大の石が腎臓にあり恐怖を感じますが、前兆を感じたら仕事を断り、食生活を見直すなど痛みと向き合うことにしました。今後も起きる恐怖は常に感じているけど、怖いが仕方ない」 慢性痛に対し集学的な治療・研究を行う日本初の施設、愛知医科大学疼痛緩和外科・いたみセンターで陣頭指揮を執る医師の牛田享宏教授はこう語る。 「痛みはお化け屋敷と似ていて、恐怖や不安を伴います。取り除くには、カラクリを知ることが第一歩。痛みそのものを抑えることが困難でも、これならば大丈夫という知識と体づくりで安心感を持った生活を習慣づける事が大切です。痛み止めや鎮痛剤など、その場の痛みを緩和することももちろん大切ですが、痛みと向き合う姿勢も重要です」 絶望ではなく希望を持って生きるには、知識や周囲の理解が不可欠だ。 【愛知医科大学教授・牛田享宏氏】 高知医科大学卒、同大整形外科入局。テキサス大学およびノースウエスタン大学客員研究員などを経て現職。新著に『「痛み」とは何か』(ハヤカワ新書) 最新[中年を襲う痛み]研究取材・文/週刊SPA!編集部
1
2