エンタメ

「天才少年」の物語から「タヌキ×野球」まで。2025年版「この野球マンガがすごい!」BEST3

昭和の香りが染みる!懐かしさ満点の『バックホームブルース』

『バックホームブルース』既刊3巻 長尾謙一郎(小学館)

『バックホームブルース』既刊3巻 長尾謙一郎(小学館)

<『バックホームブルース』あらすじ> プロ野球にしがみつく中年シングルファーザー、青空柑次郎は時代錯誤のイカれた野郎。またの名をロンリーブルース。ホームラン208mの球界最長記録以外は、汚点しか見当たらないこの男と、可愛い3人の子どもたちに幸せな未来は訪れるのか。規格外でハートフルな野球人生を描いた、令和のホームコメディ開幕。 ツクイ 続いて2位の発表。長尾謙一郎先生の『バックホームブルース』です。 オグマ 「時代遅れのポンコツ」と呼ばれるプロ野球選手が巻き起こす、騒動と笑いを描いた作品です。僕のなかで長尾先生といえば、不条理ギャグの『ギャラクシー銀座』というイメージなので、思いのほかキチンとした野球マンガが出てきて驚きました。 ツクイ むしろ昭和の香りが漂う、古くささを持った作品ですからね。でも、そこがいい。映画『男はつらいよ』のような型にハマらない男らしさと、ドラマ『寺内貫太郎一家』のようなドタバタ人情劇の融合。こちらの体調がどんなときに読んでも、ホッと染み込んでいく、ナゾの安心感がある(笑)。 オグマ プレーシーンについても、序盤は野球らしい野球をしていなかったのに、公式戦が始まったらちゃんといい試合が描かれている。マンガ家としてのスキルが高いですよね。 ツクイ 『フロウ・ブルーで〜』が将来性の評価なら、こちらは信頼性で勝ち得た結果。破天荒な父親が、プロ野球の浪漫を追い求めつつ、子どもたちへ不器用な愛情を注ぐ……もう間違えようがない。 オグマ 主人公の青空柑次郎は、今の洗練されたプロ野球には存在不可能な人物像なのかもしれませんけど、彼みたいな選手ばかりを集めた球団があってもいいと思うんですよ。作中でも柑次郎は、決して口先だけではなく、攻守でいいプレーを見せていますしね。 ツクイ 僕は「プロは結果がすべて」という考え方が、そもそも苦手なんです。結果だけで許されるのはアマチュアだけ。プロなら、グラウンドでの立ち居振る舞いやお立ち台でのコメント、プライベートの生き様まで含めて、ファンが憧れる存在であってほしいなと。そういう意味で、柑次郎のような80年代パ・リーグを彷彿とさせる選手は大好物なんですよね。 オグマ 「努力ってもんは、わざわざアピールするこっちゃねー」「(プロの自覚を)他人に悟られたらおしまいよぉっ」という柑次郎の哲学からは、往年の落合博満感すら受けます。 ツクイ 掲載誌が『ビッグコミックオリジナル』であることからも、ミドルエイジ以上を狙った作品なんでしょうけど、時代が一周まわって、間違えて若い世代にも刺さらないかなーと、ほのかな期待も寄せているところです。

タヌキ×青春×野球!?『狸田先輩の青春になりたい』

『狸田先輩の青春になりたい』既刊1巻 大島いと(講談社)

『狸田先輩の青春になりたい』既刊1巻 大島いと(講談社)

<『狸田先輩の青春になりたい』あらすじ> オグマ ではトップスリーのラスト、第3位をお願いします。 ツクイ 大島いと先生による『狸田先輩の青春になりたい』を挙げたいと思います。 オグマ 最後は「イロモノ」枠で落ち着きました。甲子園を沸かせたイケメン投手が、じつはタヌキが化けた姿だったという驚きの設定。彼を一番近くで応援すべく、野球部の後輩マネージャーとなった女の子が主人公です。 ツクイ 僕も長い間、野球マンガを読んできましたけど、タヌキと野球を結びつける発想自体が皆無だったので、いい意味で「バカなんじゃないか」と思いました。 オグマ 「いい意味で」をつければ、何をいってもいいと思っていませんか(笑)。 ツクイ イケメンの正体がタヌキだったという話も、1985年の映画『CHECKERS in TAN TAN たぬき』以来で見ました。 オグマ 藤井フミヤたちが山奥から来たタヌキだったという……わからない人は検索してください。 ツクイ マジメな話をすると、大島先生の描くタヌキがとても愛らしいし、主人公のツッコミも面白いし、楽しんで読める作品ですよ。タヌキの歩く擬音に「たぬ…たぬ…」と描いてあって、天才の所業だなと思いました。最高に可愛いです。 オグマ もっとタヌキ描写があってもいいぐらいですよね。タヌキの生態や食文化、身体能力などのアニマルな方面を深掘りしながら、たまに野球をやるぐらいのバランスのほうが、より多くのファンを獲得できそうな気もします。今後はタヌキの家族や、キツネのライバルが登場するといった展開も考えられますよね。 ツクイ この作品は『別冊フレンド』で連載されているんですけど、「好きな人と秘密を共有して急接近する」というのは少女マンガの王道ストーリー。その点では押さえるべきところを押さえているので、話は広がりやすいかと思います。 オグマ かなりこじつけ感のある話を付け加えると、群馬県館林市にあった野球場「分福球場跡」には、タヌキの石碑が建てられているんです。同市の茂林寺が、昔話「分福茶釜」にゆかりの深い場所だからです。「分福球場跡」は、野球の聖地・名所150選にも選ばれている、由緒ある場所。タヌキと野球は、歴史的にも縁のある組み合わせといえるんじゃないでしょうか。 ツクイ 茂林寺のタヌキは、どちらというと徳川家康や吉田茂などに近いイメージですけどね。こっちは「あらいぐまラスカル」みたいな、アライグマ寄りのタヌキですから。
次のページ
野球マンガ界、近況報告とアニメ盛況の兆し
1
2
3
【関連キーワードから記事を探す】