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「天才少年」の物語から「タヌキ×野球」まで。2025年版「この野球マンガがすごい!」BEST3

野球マンガ界、近況報告とアニメ盛況の兆し

オグマ 野球マンガ界の近況についても話しておきましょう。 ツクイ 『ボールパークでつかまえて!』(須賀達郎/講談社)が、今年の4月期からアニメ化されて、まずまずの評価を得られたことはよかったと思います。原作はずっと面白いんですけど、野球ファンを描いた、いわゆる「観客席もの」はどうしても絵面が地味になりがちなので、どこまで受け入れられるかが心配でした。 オグマ 千葉県にある球団がメインに据えられているということで、千葉ロッテマリーンズとコラボしたイベントも開催されました。この辺り、あらかじめ関係者同士で想定していたように思います。 ツクイ 確かに。講談社は昔からコラボに積極的な印象がありますしね。 オグマ ロッテ以外の本拠地でも、例えば「神宮球場でつかまえて!」とか「東京ドームでつかまえて!」などもやればいい。主人公のルリコにあやかって、各球場のビールの売り子さんを対象にした「ルリコを探せ!」みたいなイベントもできると思いますし。 ツクイ 昔、フジテレビでやっていた「南ちゃんを探せ!」企画を思い出しますね。アニメといえば、『忘却バッテリー』(みかわ絵子/集英社)の2期も決定しました。今は地上波だけでなく、ネット配信などでも気軽にアニメが観られる時代ですから、野球マンガと出会う機会が増えるのはとてもいいことだなと感じています。

新連載の注目株『サンキューピッチ』&『スルガメテオ』

オグマ 新しく始まった連載のなかで、何か気になる作品はありますか? ツクイ 巷間でよく耳にするのは、「少年ジャンプ+」連載の『サンキューピッチ』でしょう。 オグマ 1日3球しか投げられない怪物投手が、高校の野球部に入る話ですね。無料で読める「少年ジャンプ+」は、読者の間口が広いので、話題に上がりやすい印象です。 ツクイ 主人公の必殺パワーに厳しい制限を設けるというのは、少年マンガにおけるイロハの「イ」ですから、3球勝負はアリだと思うんです。『ドラゴンボール』の元気玉がいつでも100発まで打てたり、『NARUTO ─ナルト─』の九尾の力が最初から自由自在に使えたりしたら、面白味がなくなっちゃいますから。問題は、3球だけの投手を使ったネタをどこまで用意できるのか、という点ですよね。 オグマ バリエーションが限られてしまうんじゃないかと? ツクイ 場面の見せ方と、ノリの濃さで押し切るのにも限界がありますから。独自のルートを開拓して、大化けしてほしいです。 オグマ 今回のランキングでは、コミックス1巻の発売日が選考条件に間に合わなかったため、入りませんでしたけど、『週刊少年マガジン』で連載している『スルガメテオ』(田中ドリル/講談社)はどうでしょう? ツクイ あれは、だいぶ中身の濃い良作だと思いますよ。都内のバッティングセンターに、160km/hを計測するスルガメテオというマシンがあり……というのは、あくまで導入のつかみ。スルガメテオも作品の内容も、正体は「純粋な野球好き」そのものですよ。田中ドリル先生の野球愛が、随所に伝わるマンガになっていると思います。 オグマ 今後も続いてほしい作品のひとつですね。 ツクイ 別ジャンルのマンガにもかかわらず、野球ネタを取り上げていて面白かったのが、『カモのネギには毒がある 加茂教授の人間経済学講義』(甲斐谷忍、夏原武・原案/集英社)。甲斐谷先生は、野球マンガ『ONE OUTS』を描かれていたことでも有名です。『カモネギ』は経済学の話なんですけど、7巻〜9巻ぐらいまで大学の名門野球部に蔓延る利権構造を描いていて痛快でした。 オグマ 野球マンガではない作品だからこそ描けた、闇の部分かもしれませんね。 ツクイ 意表を突くところだと、中年の金欠ライフを描いた『こづかい万歳』(吉本浩二/講談社)の8巻。年2回の甲子園にかける「開会式感涙おじさん」が登場し、ネットを中心に話題を呼びました。 オグマ ニッチなネタでは、昨年の戦隊ヒーロー『爆上戦隊ブンブンジャー』の23話で、島本和彦先生の『逆境ナイン』パロディが放映された事件を挙げておきたいです。サブタイトルもズバリ、「炎の逆境野球」。島本先生本人も、SNSで感想をアップするほどの完成度でした。 ツクイ 子どもたちに伝わらないと承知で、全力投球してしまうスタッフに「男球」スピリットを感じますね。次世代にもぜひ、島本DNAを受け継いでもらいたいです。 オグマ 以上のようなところで、今年はまとめておきましょうか。どうもお疲れさまでした。 ツクイ ありがとうございました。
『サンキューピッチ』既刊2巻 住吉九(集英社)

『サンキューピッチ』既刊2巻 住吉九(集英社)

<『サンキューピッチ』あらすじ> 神奈川県横浜市周辺では、夜間に現れる「野球部狩り」がウワサになっていた。「3球勝負」無敗といわれる彼の正体は、横浜霜葩高3年生の桐山不折。真実を知った野球部主将の小堀へいたは、ケガで「1日3球まで」の投球制限がある桐山をチームの秘密兵器として勧誘する。高校生活の終了間際に始まった、逆転劇の行方を刮目せよ!
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