更新日:2025年06月13日 20:19
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『ここがヘンだよ日本人』名物外国人が振り返る壮絶半生。運命を大きく変えた「“左手の指”を切断する事故」

ちょんまげでもないし、刀を差してもいなかった

――そこから、どういう経緯で日本に来たのですか? ゾマホン:初めて日本人と会ったのは中国だったですよ。中国で勉強していたとき、クラスメイトの多くは日本人でした。誰もちょんまげをつけていないし、誰も刀を差していないから、「Are You Japanese?」「Show me your passport?」って聞いたら「この黒人、頭おかしいよ。俺のパスポートを見せろって言ってる」って(笑)。  そのなかに、高橋昭明さんという人の子どもがいたわけ。4年間一緒に勉強したら「このアフリカ人の態度はいいな」と思われて、彼の信用を受けた。「ゾマホンの気持ちはわかってます。日本に留学をするなら父が保証人になる」と言ってくれた。だから、私は運命を信じている。みんな、運命を持っています。 ――はじめは「なんで、ちょんまげ結ってないの?」という出会いだったのに、すごいめぐり合わせですね! そこから日本に行ったわけですか? 国費留学だった中国とは違い、日本への留学はお金がかかったと思います。

来日当初は「睡眠時間が毎日1時間半」

ゾマホン:そうですね。持っていたお金は350ドル、3万5000円しかなかったです。江戸川区西小岩の学旺日本語学校に通って、学費は雑費を入れて年100万円だったですよ。朝8時から12時までは日本語学校の授業に出て、それが終わってから八千代台にある印刷工場で2時から6時まで時給450円のアルバイト。  その後、高円寺の中国センターで日本人とアメリカの黒人に中国語を教えてた。時給3000円もらえるですよ。でも、残念ながら夜8~9時の1時間だけだった。人生、甘くないねえ。その後に東中野まで行って、宅急便の下請けの会社で夜10時~深夜3時まで荷物を運ぶ。あれも時給450円。土日に10時間仕事しても5000円しかもらえないよ。 ――えーっ、安い! ゾマホン:アパートは高円寺の家賃4万円、4.5畳の風呂なしだよ。銭湯は週に2回。だから、3時にアルバイトが終わって、4時に家に帰ってきたら台所でタオルで体を拭く。そこから、宿題をやらないとだめです。ちゃんと勉強してちゃんと学校に行かないと、学生ビザの更新はできないから。 ――全然寝られないですね。 ゾマホン:4時から宿題を始めて、5時前には横になって。朝は7時11分の電車に乗らないと、8時から始まる授業には出られません。睡眠時間は2時間いかないね。毎日1時間半くらい。  だから、電車のなかで立ちながら寝てた。それで周りの人に「すいません」って、すいませんばっかりだよ。初めて日本に来たときは「なんで、電車のなかで日本人は寝る?」って思ったけど、授業が始まってからは俺が立って寝てる(笑)。朝は電車がギュウギュウだったから。  それで、結果的に胃潰瘍になった。四谷の病院に入院して、胃カメラで見たら「この黒人は死ぬだろう」と言われたの。「睡眠時間が少ない」って言われて(笑)。
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左手の指を切断したおかげで今がある
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1978年、東京都生まれ。2008年よりフリーライターとして活動中。得意分野は、芸能、音楽、(昔の)プロレス、ドラマ評。『証言UWF 最後の真実』『証言UWF 完全崩壊の真実』『証言「橋本真也34歳 小川直也に負けたら即引退!」の真実』『証言1・4 橋本vs.小川 20年目の真実 』『証言 長州力 「革命戦士」の虚と実』(すべて宝島社)で執筆。

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