更新日:2025年06月22日 11:56
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喫茶店で近くの客に絡む“常連の迷惑老人”が姿を消した…数日後、店主が後悔したワケ

常連客ゆえの苦慮する対応と募る焦り

 稗田さんの、お世辞でも上手とは言えない手品に、岡村さんは頭を悩ます日々が続いたといいます。 「常連さんですし、長年通っていただいていたこともあって、きつく言うこともできなくて……。ただ、手品を見せられて困惑する客がいることも事実なんです」  店が混んでいない時には、岡村さん自身が話し相手になるなど、さりげなく手品をさせない工夫もしていたそうですが、それでも完全に止めることはできなかったといいます。 「本気で、ご家族に相談しようかと考えました。でも、そこまでしていいのかどうか……。自分の中でも迷いがあって」  結局、稗田さんに注意することも、ご家族に伝えることもできず、岡村さんは日々小さな葛藤を抱えたまま、時間ばかりが過ぎていきました。

突然訪れた呆気ない幕引き

 ところが、ある日を境に、稗田さんは姿を見せなくなりました。 「急に来なくなるって、最初は風邪でもひいたのかなと思っていたんです」  しかし、それから数日後のこと。店にひとりの女性が訪れました。稗田さんの娘さんだと名乗るその女性は、静かにこう告げたそうです。 「父、先日亡くなりまして……。最後まで“サカエのコーヒーが一番おいしい”って言ってたんですよ」  その言葉に、岡村さんはしばらく言葉を失ったといいます。 「正直、ホッとした部分もありました。心のどこかで、“これで毎朝の気苦労がなくなる”と……。でも、それと同時に、ぽっかり穴が空いたような感じもありました」  先代の時からの常連である稗田さんに対して、もっと思いやりを持った接し方ができなかったのかと、岡村さんは後悔の念でいっぱいだったそうです。 <TEXT/八木正規>
愛犬と暮らすアラサー派遣社員兼業ライターです。趣味は絵を描くことと、愛犬と行く温泉旅行。将来の夢はペットホテル経営
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