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速球は平均以下なのに…35歳「菅野智之」がメジャーで活躍している“決定的な理由”

注目すべき「初球の入り方」

 持ち前の制球力と6つの球種を操ることでメジャーの強打者を手玉に取っている菅野だが、円熟味を帯びた投球術は「初球の入り方」にも表れている。  一般的には、ストライクを先行させて有利なカウントをつくるのが投手のセオリーだが、今季の菅野は、あえてその定石とは異なる入り方で結果を残しているのだ。  実際、菅野の初球の被打率は.381と高く、メジャー平均(.339)を大きく上回っている。1ストライク後の被打率も.255で、こちらも平均(.218)より高い。一方で、初球がボール判定だった場合の被打率はわずか.195。メジャー平均(.255)を大きく下回っており、むしろ“ボール先行”の方が打者を封じている。  普通の投手ならボール先行で苦しくなり、甘く入って打たれることが多いが、菅野は高い制球力と多彩な球種で挽回可能。つまり「ストライク先行が有利」という定石にとらわれず、“自分の土俵に持ち込む”ことができる熟練の投球術こそが、今の菅野を支えているのだ。  ちなみに、今季活躍している他の日本人投手を見ても、1ストライク後の被打率の方が1ボール後の成績よりもいい。山本由伸(ドジャース)が、1ストライク後=.176、1ボール後=.208、千賀滉大(メッツ)が、1ストライク後=.148、1ボール後=.231といった具合だ。  逆にいえば、菅野が初球の入り方にもう少しだけ気を配ることができれば、今後さらなる活躍にも期待できるだろう。

ヤンキースタジアムで快投なるか

 オリオールズは5月下旬に借金の数が最大18まで増えていた。ところが6月に入ってからは白星が先行しており、浮上の兆しを見せている。それだけに、エース級の働きを続ける菅野の登板する試合は是が非でも勝ちたいところだろう。  21日は敵地ヤンキースタジアムでの大事な一戦。菅野は、地元ボルチモアでの前回対戦でヤンキースの強打線を5回無失点、8三振に封じ込めた。  熱狂的なファンが多いヤンキースタジアムでも同じような投球を披露できるか。菅野自身の移籍話も浮上する中で、絶好のアピールチャンスにもなりそうだ。 文/八木遊(やぎ・ゆう)
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬情報サイトにて競馬記事を執筆中。
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