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太宰治の小説に描かれた「日米開戦に歓喜した主婦」戦後80年で忘れられた事実とは

主婦が語る「敵愾心」の変化:アメリカと中国では異なる感情

青森県五所川原市「芦野公園」にある太宰治の銅像

 では、どうしてこの主婦は、ここまで熱烈に日米開戦を支持しているのでしょうか。日本にのみ戦争そのものを好む好戦的な気分が漲(みなぎ)っていたのでしょうか。なぜ、国民が開戦を支持し、熱狂していたのかを知る必要があります。  この手がかりも主婦の叙述の中にあるので、引用してみましょう。 「台所で後かたづけをしながら、いろいろ考えた。目色、毛色が違うという事が、之程(これほど)までに敵愾心(てきがいしん)を起させるものか。滅茶苦茶に、ぶん殴りたい。支那(シナ)を相手の時とは、まるで気持がちがうのだ。本当に、此の親しい美しい日本の土を、けだものみたいに無神経なアメリカの兵隊どもが、のそのそ歩き廻るなど、考えただけでも、たまらない」  引用した中にある「支那(シナ)」とは、中国のことです。この主婦は、今回のアメリカ相手の戦争は、中国を相手にした戦争とは「まるで気持が違う」と語っています。なぜ、中国相手の戦争とアメリカ相手の戦争とでは、「まるで気持が違う」のでしょうか。  その手がかりも引用した一節の中にあります。 「目色、毛色が違うという事が、之程までに敵愾心を起させるものか」  日本人と同じ黄色人種である中国人相手の戦争と、白人であるアメリカ相手の戦争とでは、「気持が違う」というのです。

人種差別の視点から読み解く戦争支持の背景

 現在、我々は「人種」という問題をあまり意識することはありません。しかし、戦前の日本では、この「人種」という問題が非常に大きな意味をもっていました。  もちろん、言うまでもありませんが、「人種差別」の問題だけが、戦争勃発の要因ではありません。歴史とは様々な原因が複雑に絡み合って生じた出来事であり、たった一つの理由だけで、大東亜戦争を説明できるはずがありません。この点は誤解しないでいただきたいと強く願います。歴史は複雑であり、たった一つの原因だけで歴史は成立しません。  しかし、現在、日本国民の多くが大東亜戦争を支持したという事実が忘れ去られ、まるで日本国民は一部の戦争指導者に騙された被害者であったかのような議論が横行しています。間違いなく日本国民は日米開戦を熱烈に支持しました。そして、この背景には、明治維新の開国以来、日本がアメリカをはじめとする白人による人種差別を受け続けているという被害者意識、そして、憤りの念が存在していました。
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明治維新から始まった独立への努力と侮辱への抵抗
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政治学者。1983年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、同大学大学院政治学研究科修士課程修了。現在、一般社団法人「日本歴史探究会」代表理事。専攻は政治哲学、政治思想。保守系雑誌のほか、産経新聞に定期的にコラムを寄稿している。 著書に『政治学者が実践する 流されない読書』『エコファシズム』(有馬純氏との共著)(以上育鵬社)、『後に続くを信ず』(かや書房)、『[新版]日本人の歴史哲学』(産経新聞出版)など多数。 YouTubeで「岩田温チャンネル」配信中。
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