更新日:2025年07月28日 13:51
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「カラーボックスいっぱいの飲み残し薬」年間8兆円の薬局調剤医療費はどこへ?減薬に取り組む“薬剤師の苦悩”

無料で薬を手に入れるために2時間かける母親

医師への疑義照会(処方に疑問があるときの医師への確認)の難しさを語る井田さん

「医師は薬を処方しても直接、儲かるわけではありません。収益を得るのは、処方薬局や製薬会社ですが、どこの調剤薬局で処方してもらうかは患者の自由です。特に高齢者は、お薬を“お土産”と思っている人が多いので、医師はサービスとして処方する部分があります。今は開業しても、医院数が多いので、1日40~50人みないと開業医も成り立ちません。昔と比べて、医師も儲からない時代になっています」 井田さんが目撃した事例ではこんなものもある。 特に印象的だったのが、休日診療所前の薬局で、ゴールデンウィークにアルバイトしていた時のことだった。 「解熱鎮痛剤のみの処方箋を持ってきたお母さんがいました。『お子さんが連休中に発熱されてしまったんですか?大変でしたね』というと『いえ。連休中に発熱したら困るので一応もらっておくためです』と言うんです。その辺りの地域では、高校生まで医療費が無料です。もちろん診察代もお薬代もタダです。GW中はこういった患者さんが増えるせいか、病院で1時間待ち+薬局でも1時間待ち。こんな待ち時間を並んでも、タダでもらえる解熱鎮痛剤が欲しかったということに衝撃を受けました」 ご存じのように、解熱鎮痛剤は、処方してもらわずとも、ドラッグストアに行けば買える。緊急の患者も待ち時間も増える。迷惑な話だ。 だが、こういった患者側のニーズで処方量が増えるといった部分は大きいと、井田さんは言う。

マイナ保険証の調剤履歴は誰も見ていない

2024年12月2日以降、従来の健康保険証は、新たに発行されなくなり、マイナンバーカードを医療機関・薬局で健康保険証として利用することができるようになった(厚生労働省「マイナンバーカードの健康保険証利用について」)。 マイナ保険証を利用すると、医療機関や調剤薬局では、患者の同意に基づき、以下の情報が閲覧可能となる。 ・調剤履歴:過去に処方された薬剤情報(薬の種類、投与量、処方日など)。マイナポータルを通じて、2022年6月以降の保険請求データに基づく過去5年分の薬剤情報 ・診療情報:診療歴や治療・検査内容(具体的なカルテの記載や検査結果までは含まれない)。 ・特定健診情報:メタボリックシンドロームに着目した健診結果など。 これらの情報は、医師や薬剤師が適切な診断や処方(例:飲み合わせの確認や重複投薬の防止)を行うために参照するためのものだが、役に立たないのか。 「マイナ保険証の情報は、1か月遅れで更新されます。見るための機械を導入するには、補助金も出ますが、薬局側の負担も、20万~30万円あります。その負担ができない・デジタル化に対応できない薬局が閉店することも多いです。現状では、飲み合わせの確認や重複投薬の防止にはなっていません。情報の更新が遅いので、大手調剤薬局などを除いて、誰も見ていないからです」 筆者が、医師や薬剤師、看護師など、医療関係者に取材した結果も、同様のものだった。では、私たちはいったいどうやって薬に向き合っていけばいいのだろうか。 「僕は、自分の健康は自分で守るしかないと思っています。医師・薬剤師・製薬会社の宣伝など、1つの情報に頼りすぎず、広く情報を集めて判断するのが一番です」 医療費が下がらない問題は、私たちの税金に直結する大きな問題だ。医師だけではなく、薬の専門家である薬剤師に相談することも、大切なのではないか。また制度の改革も急務だ。 <取材・文/田口ゆう>
ライター・原作者・あいである広場編集長。立教大学経済学部経営学科卒。「認知症」「介護虐待」「障害者支援」「マイノリティ問題」など、多くの人が見ないようにする社会課題を中心に取材する。文春オンライン・週刊プレイボーイ・LIFULL介護などで連載・寄稿中。『認知症が見る世界』(竹書房・2023年)原作者
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