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上智大中退後、アルコール依存&生活保護受給者に…「人生の迷子だった男」が年商85億円企業を創るまで

10代後半からの飲酒がたたりアルコール依存症に

高浜敏之「酒は父の影響で、10代後半から飲んでいました。その頃から、酒乱の気があり、大暴れして警察を呼ばれたり、仕事をブッチすることもたびたびありました。毎日ではないですが、飲むときは1日にウィスキー1本、ワイン2本ほど飲んでいました。バイトはしても、そのお金は酒に消え、社会生活がままならなくなりました」 ある日、酒の離脱症状で、不安発作に襲われた。35歳のとき、アルコール依存症の診断が下る。同時に、生活保護受給をすることになった。 「35歳から38歳の間は生活保護受給しながら、自助グループ通いをしました。リハビリの日々でした。今、重度訪問介護の仕事をしている半分の動機は、ダメ人間から更生したかったからです。半グレや反社などが、更生して、NPO法人の代表になったり牧師になるのと似てるところがあるかもしれません(笑)」 その後、高齢者向けグループホームなどで働き、社会復帰を遂げる。47歳で、重度訪問介護の株式会社土屋を起業する。

介護の世界の嫌儲主義に疑問

高浜氏は、規模の経済を活かし、事業展開することで、年商85億円の売上に達しようとし、従業員にキャリアパスの道を切り開いている。嫌儲主義の介護業界でこれだけの実績を出すと、ひがみもあるのではないか? 「よく『儲け主義』といった批判を受けます。だけど、そういった私たちを批判する小規模事業者もM&Aをすると、経営者だけちゃっかり高額の役員報酬をもらっていたりする(笑) 『批判してたけど、自分たちもしっかり儲けているじゃないですか!』と言いたくなることがあります。利益だけを追い続けるのは、人の生活を支える仕事においては危険だと思います。だけど、私も昔は、そんな事業所の社長を、金儲け主義と嫌悪感を抱き、時に罵っていました。しかし、一定の利益を出さなければ、肝心のサービスを提供し続けることはできません」 介護事業者の利益は、介護報酬で一律に決まっている。スケールメリットを活かしたことで、高賃金も実現し、社員に還元している。最後に、これから重度訪問介護を目指したいという人への言葉を聞いた。 「私もグループホームやデイサービスなどで働いてきましたが、訪問介護は密室なので、逃げられません。1対1で存在を突きつけられる。介護士は重度の障害者の眼差しにロックされます。命と直に向き合うことで、自己承認欲求も満たされるので、かつての私のように人生の迷子になっているなら、歓迎します」 社員の「やりがい」を利用し、低賃金でこき使う「やりがい搾取」のような事業者も多い中、高浜氏のような考え方が、人材不足の鍵となるのではないか。 <取材・文/田口ゆう>
ライター・原作者・あいである広場編集長。立教大学経済学部経営学科卒。「認知症」「介護虐待」「障害者支援」「マイノリティ問題」など、多くの人が見ないようにする社会課題を中心に取材する。文春オンライン・週刊プレイボーイ・LIFULL介護などで連載・寄稿中。『認知症が見る世界』(竹書房・2023年)原作者
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