更新日:2025年08月07日 10:57
スポーツ

セ・パ交流戦で7~12位を独占したセ・リーグ。広島カープの市民性は“変わらなさ”の象徴か、革新の息吹か

海外放映というグローバリズムに対抗する“カープ的”ローカリズム

カープの専用球場・マツダスタジアム

一方、本稿ではセリーグの保守性を「放映権ビジネスの一括化」という視点で、とくに広島東洋カープ球団(以下、カープ)に注目して考えてみたい。 パ・リーグでは6球団がまとまって放映権ビジネスを行っている一方、セ・リーグはいまだに6球団がバラバラで意見の一致が取れていない。パ・リーグは放映権をパシフィックリーグマーケティング株式会社が一括して管理しており、同社が運営する「パ・リーグTV」や、スポーツ中継配信サービス「DAZN(ダ・ゾーン)」でもパ6球団すべて+セ5球団のホームゲームを観戦することが可能だ。だが、セ・リーグには同様の仕組みがいまだに存在していない。 「セ・リーグは保守的」と言うと、どうしても“球界の盟主”ジャイアンツが強権をふるって古いままの野球を守っている――そんなイメージがあるかもしれない。だが現在のジャイアンツは指名打者制の導入も含め、改革に積極的な球団に生まれ変わりつつある。 ではセ・リーグの放映権ビジネスの一括化が進まないのはなぜかというと、主たる原因は発足時から所属するカープが地元・広島のテレビ・ラジオ放送局との伝統的なつながりを優先して首を縦に振らないからだ、といわれている。実際、DAZNでNPB12球団のうち主催試合の中継を行っていないのはカープだけである。 DAZNは本社をイギリス・ロンドンに置くグローバルプラットフォーム(世界中のユーザーに均一な体験・機能を提供できるサービス)だが、現時点で海外から日本プロ野球をライブ視聴することは(基本的には)できない。しかし広島を除く11球団がDAZNで試合を配信するようになったのは、いずれ海外向けに放映権ビジネスを広げていく布石と考えられる。 その一方でカープ戦のテレビ・ラジオ放送は、在広ローカルの特定局に独占させるのではなく各局に“平等”に分配しようとする姿勢が見られる。このような「地元重視」の姿勢は1945年8月6日のアメリカによる原爆投下という惨禍を経験したのち、復興の象徴として市民の力で生まれた「市民球団」であることにかかわりを持っている。放映権ビジネスの一括化が進まないのも、どこでもカープ戦を観られるようにしようとする“DAZN的グローバリズム”に粘り強く抵抗する“ローカリズム”の発露でもある、と捉えられる。 つまりセ・リーグの放映権一括化が進まない背景には「革新」対「伝統」だけでなく、「グローバリズム」対「ローカリズム」というもうひとつの対立軸があるのだ。
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編集者・ライター。1986年、神奈川県生まれ。一橋大学社会学部社会学科卒、同大学院社会学研究科修士課程中退。批評誌「PLANETS」編集部、株式会社LIG広報を経て独立。2025年3月に初の著書となる『文化系のための野球入門 「野球部はクソ」を解剖する』(光文社新書)を刊行。現在は「Tarzan」などで身体・文化に関する取材を行いつつ、企業PRにも携わる。クラブチームExodus Baseball Club代表。
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