更新日:2025年08月07日 10:57
スポーツ

セ・パ交流戦で7~12位を独占したセ・リーグ。広島カープの市民性は“変わらなさ”の象徴か、革新の息吹か

カープファンの郷土愛は「輸出」できる!?

もっとも、カープとカープファンのもつ“市民性”は、「広島ローカル」にとどめておくのには勿体ないポテンシャルがあるように私には感じられる。 少し前の話になるが、’16年のセ・リーグ クライマックスシリーズ ファイナルステージはシーズン首位だったカープのホームであるマツダスタジアムを舞台に、カープと横浜DeNAベイスターズが激突した。当時ベイスターズの主力打者だった梶谷隆幸は、ジャイアンツとのクライマックスシリーズ ファーストステージで死球を受け左手の薬指を骨折していたが、広島とのファイナルステージにも強行出場した。 その梶谷はファイナルステージ第3戦、浅いライトフライに飛び込み、骨折しているはずの左手にはめたグラブで好捕した。これに対し、敵地であるはずのマツダスタジアムを埋め尽くすカープファンから万雷の拍手が送られたのである。 カープファンたちは梶谷が強行出場していることを知っていたからこそ、敵チームであるはずの彼の気持ちのこもったプレーを目にしたとき――応援団に促されるのではなく――“自発的”に賛辞を送った。カープファンが長年培ってきた、平和や民主主義を大切に思う“市民性”が ある種の“スポーツマンシップ”へと昇華していることを象徴するシーンだったと言える。 原爆の惨禍を受けた「被爆都市」としての広島のローカリズムが、 “スポーツマンシップ”という普遍性へと、自然に接続している。これは本来、広島ローカルにとどまらず日本全国、さらには全世界へと発信されるべきスポーツの価値である。 そのように考えていくと、「“市民性”を重んじるカープこそ、グローバルに自らの持つ価値を発信していく責務がある」といえるのではないだろうか。もちろんその際、ローカルのもつ歴史や文化との自覚的な接続は欠かすことができない。放映権を含めて「伝統をリスペクトつつ、革新を取り入れる」「それが結果的にパ・リーグやメジャーよりも革新的になっている」という方向性を、カープにとどまらず今やセ・リーグのファンも球団側も、ともに考えていくべきフェーズに入っている。 いたずらに伝統を固守するのではなく、自分たちの守り育てるべき価値が何なのかを弁別し、その価値を自覚的に発信していく。そのような積み重ねが、セ・リーグの「保守性」をポジティブなかたちで一段上のステージに押し上げる原動力となるのではないだろうか。
編集者・ライター。1986年、神奈川県生まれ。一橋大学社会学部社会学科卒、同大学院社会学研究科修士課程中退。批評誌「PLANETS」編集部、株式会社LIG広報を経て独立。2025年3月に初の著書となる『文化系のための野球入門 「野球部はクソ」を解剖する』(光文社新書)を刊行。現在は「Tarzan」などで身体・文化に関する取材を行いつつ、企業PRにも携わる。クラブチームExodus Baseball Club代表。
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