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10歳のとき、母の彼氏から「性被害を受けた」25歳女性の今。「自分が穢れているなんて思わなくていい」と主張できるようになるまで

おじさんも「苦しんで、もがいていたのかも」

橋本なずな――加害者である“おじさん”に対しても、憎しみだけではない感情があるとおっしゃっていますよね。多角的な分析によるものだと思いました。 橋本なずな:心理学を学んだとき、「現在の加害者が過去の被害者であることは多い」ことに気づきました。もしかすると、おじさんも過去の何かに苦しんで、もがいていたのかもしれません。  もちろん、どのような理由があっても性暴力を働いていいはずはなく、私にしたことは到底許せません。一方で、おじさんが私にしたのがただの愉快な気持ちからではなく、彼の心の傷によるものであったほうが、私自身が救われるというのもあるんです。もちろん、今となっては「彼がどんな人物だったのか」を深層まで知ることはできないのですが。

性犯罪に対する日本社会の意識を変えたい

――橋本さんはお辛い過去を世間に公表して活動することを決められました。その意図はどんなところにありますか。 橋本なずな:大きな話でいえば、性犯罪に対する日本社会の意識を変えたいとは思っています。性犯罪と言うと、いわゆる性交を指すものだと思って、それ以外は矮小化されることが今もなおあります。たとえばお尻を触られる、無理に抱き寄せられる、キスをされる――これらはすべて性犯罪なのですが、「そのくらいは目くじら立てず」とする空気感がまだ残っています。  また、個々人についてフォーカスすれば、いまこの社会には性犯罪に遭ったけれども打ち明けられない人が多くいます。私が世間に出ることで、そうした人たちにも届く発信をしていきたいと考えています。性被害は、必ずしもパートナーに打ち明けなくていいし、自分が穢れているなんて思わなくていいんです。  過去に性被害に遭った人のパートナーになる人も、自暴自棄になったら「過去の被害と、今現在の悩みは関係ない」とはっきり言ってあげてほしい。つらいことを経験した人の人生の一部を担うのは勇気の要ることだけれども、打ち明けるのも同じく勇気がいることだから、覚悟を示して安心させてあげてほしい。私が発言することで、そんな優しさに溢れる社会を構築する助けになればと思っています。 =====  何十年生きたとしても、その地点に縛られてしまう出来事はある。性被害に遭った人が自分の人生を取り戻すためには、「強くあれ」「前を向け」以外の、真に心を満たす声掛けが必要になる。橋本さんは勇気を振り絞り、声を上げた。矮小化して冷笑することなく、彼女の告白に真摯に呼応できる社会であればいい。 <取材・文/黒島暁生>
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki
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