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相次ぐ悲劇に揺れるボクシング界。“水抜き”の危険性、疑問視される安全管理…「廃止論」で問題は解決するのか

疑問視される安全管理体制と“ボクシング廃止論”

ボクシング この「水抜き」問題を抜きにしても、昨今のボクシングは厳しい目にさらされています。総合格闘家の青木真也選手は、かねてよりボクシングの安全管理体制に疑問を投げかけていました。  穴口一輝選手が亡くなった試合が年間最高試合に選ばれた際に、井上尚弥選手がこの授賞が<穴口選手へのエールでもあった>と述べたのに対して、<格闘競技全体で安全管理の徹底と競技自体(ルール)を疑うことが安全と競技存続に大事。お気持ち表明と美談で済ませてはいけない話です。人が死んでますからね。>と応じ、公然と反論したのです。  危機感を抱いているのは、青木選手だけではありません。一般のSNSユーザーからは、“人の顔を殴り合って観客が喜ぶようなボクシングという野蛮なスポーツはなくすべきではないか”との声も聞こえてきます。こうした意見は決して極論ではなく、海外でも同様の“ボクシング廃止論”はたびたび起こっています。  今回、改めて日本から議論が再燃したと言えるでしょう。

ボクシングがなくなることはあり得るか?

 では、世論に押されて、死と隣り合わせのボクシングがなくなることはあり得るのでしょうか?  それもまた考えにくいことだと、中東の放送局『アルジャジーラ』は報じています。(2024年12月27日配信)  理由は、まず巨大な経済的な価値です。2021年時点で、ボクシングの競技者数はアメリカだけでおよそ670万人に達し、関連用品の市場規模も16億ドル(日本円でおよそ2360億円)を超えるほどの、巨大スポーツビジネスとなっているからです。  加えて、道徳的な意義からもボクシングは大きな役割を果たしている。世界ボクシング連盟(WBF)の広報担当者は<ボクシングは若者に良い影響を与える。危険なストリートから彼らを遠ざけ、規律と自己肯定感を植え付けることができるからだ。いまのところ、悪い点よりはるかに良い点の方が多い>と語っていたといいます。  つまり、WBFは、ボクシングは野蛮の対極にあるものだ、と言っているのです。そのうえで、安全性に関わる制度を継続的に改善していくことが何よりも重要だと記事は訴えています。  ボクシングファンである筆者も、おおむね同意見です。ボクシングを危険視する人達の意見もよく理解できますが、では、彼らの言うようにボクシングを廃止したとして、問題は解決するのでしょうか?  きっとボクシング以上に危険な競技がアンダーグラウンドで人気を集め、そこでは現状のボクシング以上の生々しい惨劇が繰り広げられることになるでしょう。  当然、表舞台に出てこないからといって、放置しておけばいいわけではありません。臭いものにフタをするだけでは、物事は収まらないのです。  その一方で、青木真也選手による井上尚弥選手への“苦言”という客観性を、ボクシング界全体が持つ必要もあります。むしろ、関係者は青木選手以上の冷徹さをもって事態の収拾に当たらなければならないでしょう。
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ボクシングというスポーツの特殊性
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音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。X: @TakayukiIshigu4

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