仕事

『ザ・ノンフィクション』で話題、人気寿司店経営者を直撃。「500万円」を持ち逃げされても“ワケアリ”従業員と向き合い続ける理由

困っているヤツがいるから、話を聞いている

7店舗もの繁盛店を束ねる身でありながら、一人の従業員のために多くの時間を割くことは、いわば合理的ではないようにも思える。そのあたりはどのように考えているのか。 「従業員が増えれば、比例してコミュニケーションのための時間が増えるのは必然。当然大変なことも少なくありません。そのうえで、コミュニケーションをとり続けないと、僕自身が不安で仕方がないんです」 ほかの従業員は“ひいき”だと感じないのだろうか。 「みんな、それが僕だとわかってくれていますから。ある期間だけを切り取れば、特定の従業員だけに時間を割いているように見えるかもしれませんが、それはそいつが困っているからですよ。困っているヤツがいるから、話を聞いてあげているだけです」 新約聖書に出てくる「羊飼いのエピソード」のようだ。100匹の羊を育てている羊飼いがおり、その中の1匹がいなくなったら、羊飼いは99匹を差し置いてでも1匹を探し歩くというもの。これは、神の働きを表現する逸話だが、まさに阿部氏は「その時困っている人」に全力を注ぐ男なのだ。 「今は、脳梗塞になった従業員を見ています。リハビリも頑張りましたが、お医者さんには『これ以上よくはならない』と言われました。だけど、なんと言われようが、少しでも元に戻して仕事ができるようにしてあげたいですね。だって、うちを辞めたら普通に生活していけませんからね」

“密”なコミュニケーションを取り続けるワケ

こうした取り組みは、合理性とは真逆の行動ではないか。ここまで従業員に寄り添える原動力はどこにあるのか。 「僕には『何もない』からです。寿司を握るのがすごく上手なわけでもない。今の時代に、インターネットもうまく使えないし、メールアドレスさえ持ってませんからね。せめて従業員が『一緒に働いてもいいよ』と思ってくれるような場を作っているだけです」 そんな阿部氏だが、ここに来て大きな転換点を迎えていた。 「今までのやり方ではもう限界でしょうね。現在50人くらいのスタッフがいますが、これ以上増えるとなると、スタッフ全員を本当の意味で『見れている』とはいえませんからね。僕はまもなく社長を退く予定です」
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次期社長なら「大丈夫」だと思っている
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Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。

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