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広陵高校の大会辞退から見える“高校野球の構造的問題”。「暴力とSNSの誹謗中傷はどちらが悪か」という不毛な問い

出場辞退が望ましい決断とは考えていない

私は必ずしも出場辞退が望ましい決断だったとは考えていない。規定による処分は受けており、事案とは関係のない選手もいる。ただし、監督・部長には類似事案の実態調査に専念させる、つまり大人は大会に参加させないなどの妥協点を探る必要はあった。 甲子園廃止のような極論を私はとらないが、高校野球が改革の時期にあることは間違いない。方向性はすでに日本学生野球憲章にある。 〈学生野球は、法令を遵守し、健全な社会規範を尊重する〉 社会的に見てハラスメント行為がないかを外部の目を入れて厳しく調査し、憲章違反を白日の下に晒していく必要がある。第三者による被害相談窓口も必要だろう。 過去にはPL学園でも暴力事件があったが、厳しい上下関係は時に力の源泉として語られてきた。私にも、不祥事を報じながら構造的問題には踏み込まず、高校野球の光の面を大きく報じてきた過去がある。そんな美談だらけの高校野球はもういらないのだ。球児も被害を黙っているという時代は終わりを告げた。変わるのは大人のほうである。
石戸諭

石戸諭


ノンフィクションライター。’84年生まれ。大学卒業後、毎日新聞社に入社。その後、BuzzFeed Japanに移籍し、’18年にフリーに。’20年に編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞、’21年にPEPジャーナリズム大賞を受賞。近著に『「嫌われ者」の正体 日本のトリックスター』(新潮新書)
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