ライフ

「手足が動かなくても、自分の世界は自分で決められる」25歳女性アーティストが口でタッチペンをくわえて描く“自由への道”

在宅勤務で“将来の不安”と向き合うことに

作品

六鹿香さんの作品「ねがいごと」(口と足で描く芸術家協会提供)

——コロナ禍で恐れていた「在宅勤務」に……。 それまで「家にいるだけじゃダメになる」と思っていたんですけど、いざやってみたら「意外と在宅でもいけるな」って(笑)。自分のペースで仕事ができるし、ちょうど人付き合いに疲れていたんです。 それまでは、ヘルパーさんを使わずに、友達や職場の人と対等に接することにこだわっていました。でも、やっぱり気を使うし、どこか行くにも、何をするにも「お願い」しなきゃいけない。 むしろ、ヘルパーさんを使う方が楽なんじゃないの? そもそも、一人でいる方が自由なんじゃないの? と、思うようになってきました。あとは、ずっと実家で暮らしていたので、将来のことを考えたときに、不安もありました。 ——ご両親が高齢になったときですね。 親が面倒を見れなくなると、私たちみたいな障がいを持っている人間は、グループホームに移ることが多いんです。そこでは食事の時間とか就寝の時間とかが色々決まっていて、縛られてしまう。 ちょうどそのタイミングで、展示会で知り合った方から『口と足で描く芸術家協会』に所属して絵を描いてみないか、というお話をいただいたんです。私の描いた絵が、何度かコンテストで入賞していたのを見てくれていたみたいで。でも、今は自分の部屋もないし、絵を描く環境も整えにくい。 そこで、一人暮らしを本気で考えるようになりました。

21歳で叶えた「一人暮らし」という“自由”

作品

六鹿香さんの作品「シロクマかき氷」(口と足で描く芸術家協会提供)

——ご両親の反対はありませんでしたか? もう21歳だったし(笑)、親からは「お金のことが大丈夫なら、反対はしないよ」と言ってもらえたので、自分で『SUUMO』を使って探しました。 どうしても譲れなかったのが、「ヘルパーさんとある程度距離がとれる空間があること」。だから、ワンルームとか1Kは全部除外して、キッチンと居室がドアで区切られている1DKに絞って探しました。あとは、車が運転できないから、交通の便がいいところ。エレベーターがあることも絶対条件でした。 ——実際に暮らし始めてみて、どうでしたか? 思っていたより、ずっと快適でした。一人だと食材の賞味期限を把握するのがちょっと大変なくらいで(笑)、むしろ自分の好きなように生活できるのが最高です。楽天とかネットで家具や雑貨を見て、「この収納かわいいな」「クッションどうしようかな」とか、いろいろ選ぶ時間も楽しくて。 もちろん自分だけじゃできないこともあるので、ヘルパーさんには料理やお風呂の介助をお願いしています。 ——ヘルパーさんを頼んでみたのですね。 ヘルパーさんの中には年の近い方や、趣味があう方もいて、友達感覚で遊んでいる方もいます。今や一緒にイベントに行ったり、ライブに行ったりする仲です。 初めは「趣味は友達とじゃないと自由に楽しめない」と思い込んでいたけど、ヘルパーさんだと、何か頼むことに罪悪感もないし、むしろ楽しいって気づきました。
次のページ
「なんとかなる」で生きていく
1
2
3
ライター、作家。主に金融や恋愛について執筆。メガバンク法人営業・経済メディアで働いた経験から、金融女子の観点で記事を寄稿。趣味はサウナ。X(旧Twitter):@yel_ranunculus、note:@happymother

記事一覧へ
六鹿 香:Instagram(@m.kaori_illust)
口と足で描く芸術家協会:ネットショップ
【関連キーワードから記事を探す】